雪崩被害防止の講演会開催 北海道防災航空隊ヘリも飛来

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講演する気象庁気象研究所の荒木研究官(許可を得て撮影、工学部で)

雪山での雪崩被害を未然に防ぐため本学山スキー部ら3団体は10日、本学工学部などで「雪崩から身を守るために」と題した講演会を開催した(他主催=雪崩事故防止研究会、日本雪氷学会北海道支部)。雪崩のメカニズムや対策、死亡事故が起こった事例などを研究者や大学教授、雪崩事故防止研究会のメンバーらが説明。プログラム中、北海道防災航空隊による救助デモンストレーションも本学陸上競技場で行われ、ヘリコプターからロープで降下した隊員が要救助者をヘリに吊り上げる様子などが公開された。

 雪崩のメカニズム

講演では、初めに北海道教育大学札幌校の尾関俊浩教授が雪崩の発生メカニズムを説明した。雪崩には「表層雪崩」と「全層雪崩」の2種類あり、表層雪崩の原因は古い積雪とその上に積もった新雪の間にある「弱層」だと話した。弱層は、あられや霜、「雲粒(雲を構成する水滴)」の付着していない雪で構成され、上に積もった新雪を支えられる強度があるかが雪崩発生の有無を決めるという。表層雪崩の速度は最大で時速200キロメートル以上に達し、新幹線の速さに相当する。

雪崩への対策は

雪崩対策については雪崩事故防止研究会の大西人史さんが話し、弱層の確認法や発生した際の行動などを説明した。シャベルなどを用いる「コンプレッションテスト」で、ピンポイントではあるものの弱層を確認できると紹介。また、雪崩は斜度30度から45度の場所で起こりやすく、発生したときは30度以下の比較的ゆるい斜面へ逃げるよう勧めた。加えて、ビーコン(受・発信機)やシャベル、プローブ(金属製のポール)などを携帯することで生存率が高まることも強調した。

低気圧による短時間大雪が雪崩に 栃木・那須雪崩事故

栃木県那須町で2017年に発生し、8人が亡くなった那須雪崩事故についての調査結果も取り上げられた。気象庁気象研究所の荒木健太郎研究官は、事故発生時の気象状態について説明。日本列島の南岸を進んだ低気圧が、弱層となる雲粒の付着していない雪を降らせた後、短時間大雪をもたらしたことなどが雪崩に繋がったと話した。

また、防災科学技術研究所の中村一樹主任研究員は、低気圧での降雪による表層雪崩の危険度を予測し、マップ上に表示する研究を行っていることを紹介。現在は試験的に山岳関係者のみに情報を提供しているが、今後検証などを経て広く公開していきたいとしている。

主催した団体の一つ・雪崩事故防止研究会の阿部幹雄代表は、「生きて帰ってくることが山に行く者の責任。この講演をきっかけに雪崩に対する知識を増やしていってほしい」と講演会を締めくくった。

救助のデモンストレーションの様子(陸上競技場で)

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