朝 よく噛むと血糖値がより低下 ―本学山仲准教授らが発見

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本学教育学研究院の山仲勇二郎准教授らは、朝と夜では朝のほうが咀嚼(そしゃく)による血糖値低下の効果が大きいことを発見した。以前から「よく噛むこと」について様々な効果が実証されていたが、今回のような発見は初めて。この研究結果は、肥満や糖尿病の予防・改善のための指導法において、食事時間や食事方法の指導に応用できるという。

図1 インスリン分泌量の変化
図2 血糖値の変化

研究の結果、血糖値を低下させる働きを持つホルモンであるインスリンの初期分泌量が、朝では40回噛む場合と10回噛む場合で40回噛む場合により多くなり(図1)、血糖値が速やかに低下することが分かった(図2)。一方で、夜については40回噛む場合と10回噛む場合で違いは見られなかった。これまでの研究で、体内時計によって朝はインスリンの分泌量と働きがともに大きく、夜はその両方が小さくなることがすでに報告されており、今回元々朝に多く分泌されるインスリンが、よく噛むことでさらに多く分泌されることが確認されたといえる。

実験で咀嚼回数が40回と設定されているため「40回噛まなければいけないのか」という疑問がよくあることに対して、「噛まないよりはよく噛んだ方がよいということ」と補足。また、夜には咀嚼回数によるインスリン分泌量増加や血糖値変化が見られなかったことについては「噛まなくてもいいということではない。血糖値調節だけなく咀嚼には満腹感が早期に得られ食事量が抑えられるなど様々な効果がある。朝夜にかかわらずよく噛んで食べてほしい」とアドバイスした。

この発見の具体的な応用に関して「肥満や糖尿病を予防したい人に対して、朝食ではいつも以上によく噛むことを意識すると、その予防につながるといえる」、「いままで食事量に注目して行われてきた栄養指導において食べ方や食べる時間帯を工夫する新しい指導に応用できる」と話した。

今回の研究について山仲准教授は、糖尿病を研究したいというナイジェリアからの留学生と研究を始めたことがきっかけだと話す。ナイジェリアの食生活は1日2食の場合が多く、炭水化物中心の生活で生野菜や新鮮な魚が手に入りにくい地域も国内にあることからか、糖尿病や高血圧を罹患している人が多いという。しかし、予防・改善方法として、食物繊維が豊富な食事にするなどの食事内容を変える方法をとることは難しい。その中で、よく噛まずに飲み込むような食べ方をしているという点に着目し、よく噛むことと血糖値に関係はないのか研究を始めた。

実験では、よく噛んだ場合とあまり噛まない場合で血糖値を比較した。加えて、同准教授は体内時計の研究を主としているため、ナイジェリアが1日2食の文化であることも合わせ、朝と夜という時間で分けての比較も行った。その結果、よく噛んだ場合には血糖値が低くなったことが分かった。しかしナイジェリア人特有の効果ではなく、よく噛む文化のある日本人でも同様の効果があるか検証するため今回の研究に至ったという。

(グラフ中の**は朝40回と夜40回に、†は朝40回と朝10回に統計的有意差があることを示している。)

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