大学ランキング400位の意味・読み取り方
イギリスのタイムズ社から毎年発行される大学ランキング。北大の2024年における取り組みはどのように評価されたのか。
北大の総合順位は350〜400位であり、ランキングに参加した国内の大学や世界の大学と比較した際、上位に位置付けていると言える。タイムズ社が出している大学ランキングは上位数百校のみが具体的な順位を与えられ、それ以外の大学はランキングの範囲が提示される形式となっている。
全世界を見渡した時、北大は決して悪い順位ではない。しかしながらこの順位は近年の取り組みが高評価を受けたものとは言い難い。むしろ数年前の順位を維持または下げており、向上しているとは言えない。なぜなら、ランキングは複数の「インパクトランキング」によって算出され、これらのインパクトランキングにおいて北大の順位は2010年代を境に低下の傾向を示しているからだ。
インパクトランキングとは各大学を様々な分野から評価したものである。項目の中には教職員に与えられる研究環境や学生への生活支援、地域経済への貢献、公表された論文の被引用数などがあり、複数のランキングを複合的に判断される。ただしタイムズ社がランキングを作る際には、各大学から提出される資料を基にするため必ずしも客観的な評価となっているわけではない。
北大はいくつかのインパクトランキングの内、食料関係と産業関係に長けていると読みとれる。
食糧関係というのは学内の食料廃棄量や学生の食事状況、飢餓に関する研究の影響力についてである。学生に関わる取り組みとは学業にとらわれない総合相談窓口などがあり、研究の影響力とは北大に端を発する食糧、もとい食料についての論文の数のことである。
産業に関する取り組みは、地域経済と大学における研究の協力や北大によって取られた特許の数などで計られる。北海道で深刻化する遠隔地の過疎化や高齢化に対する地域創生事業に取り組む会社や大学院に端を発するスタートアップ企業などに力を入れていることは例えば、北海道大学広報・社会連携本部により、北大の学生と釧路市や厚沢部町、紋別市などの地方自治体がサマーインターンシップで課題解決のために協力したり、フィールドワークを行ったりすることからも読みとれる。
これらインパクトランキングの総合的な判断を統合したものが大学ランキングであるため順位を見た時に感じる大学間の優劣には大学ごとの短所と長所が平滑化され、隠されてしまうことが多い。
北大の順位を構成するインパクトランキングを振り返ると第一次産業や地域連携に秀でている。国際的な研究競争が絶えない情報技術や電子工学だけでなく地域に根付いた事柄の研究でも評価を受けられるのは総合大学である北大の長所と言える。北大の看板学部とされる、農学部や獣医学部、水産学部などの活動には今後も大きな期待が寄せられる。
これらの成果を継続して出すために、食料生産に関する研究などは生物の生育に必要な土地や時間などの用意が膨大なものとなる。今後も第一線で活躍するためには各研究への予算や教員の待遇を向上させ研究環境を維持できるようにすべきである。
(取材:山口 執筆:山口・吉村)