「夏と、野球と、応援団」七大戦特集/北大応援団

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左から外ノ池(とのいけ)団長(工学部4年)、鳩貝さん(工学部2年)、早坂さん(医学部3年))

12日に始まった第67回全国七大学総合体育大会硬式野球、北大硬式野球部は主管校として東大と対戦した。大会あるところに応援団あり。今回は、北大硬式野球部を応援する北大応援団に取材した。

試合開始の前に応援団の活動が始まる。太鼓の音も相まって体の芯まで響くような応援だ。その気迫、熱量は衰えることなく試合終了まで続いた。

左)試合開始の応援 右)試合終盤あと一人に追い詰めた鈴木投手を鼓舞する応援

投手が一球投げるごとに、打者に球が投じられるごとに応援は行われる。その気迫のこもった熱い応援はマウンド上、そして打席に立った選手に届き力を与える。

応援は応援団だけで行うものではない。観客も自分の家族を、先輩を、恋人を、地元の若者を応援する。応援団はその観客を応援に巻き込む工夫を何重にも凝らしている。

特に印象的だったのが守備交代の間に行われるフリップを用いた小噺だ。応援団員はそれぞれが北大や七大戦にかけた様々な縁起の良い小噺を持ち寄り、フリップを使い観客に向かって発表する。それぞれの話がユーモアに富んでいて聞いてて飽きない。すべての小噺が「つまり今日北大は勝ちます!」につながるのがテンポが良く、気持ちいい。

左)小噺を行う外ノ池団長 右)点が入った時の楽しげな雰囲気の伝わる踊り

試合中での応援にも観客を巻き込む心を忘れない。「今から打席に立つのは先ほど素晴らしい守備を披露してくれた○○選手です!みなさん○○選手を応援しましょう!」と印象付けを行ったり、ヒットが出ればハイタッチ、点が入れば観客を巻き込んで踊るなど、観客の応援への没入を促し、一体感を作る。

そして何よりも印象に残ったのは細やかな心遣いである。観客に北大カラーのメガホンを配り、帰るときは客席に忘れ物がないか確認する。このような細やかな心遣いの積み重ねが良い応援を作っていくのだ。

試合前観客にメガホンを渡す外ノ池団長

その全力の応援に押され北大は東大を2点で抑え、4-2の快勝を収めた。観客と応援団が一団となり、勝利を祝して歌った「都ぞ弥生」は今日一日の応援を如実に表していて素晴らしかった。

勝利を祝す「都ぞ弥生」

試合終了後、片付けをして帰る道中、応援団の方々は選手の家族や地域の人など様々な人から温かい言葉をかけられていた。「素晴らしい応援ありがとう」や「今度も期待してるよ」など皆が応援団を温かく見送る。

楽器や小道具を車に乗せた後、すぐに反省会が始まった。今回の応援の良かった点、改善点をぶつけ合い、次の応援のために常に向上し続ける応援団の魂を見せてもらった。

外ノ池団長は今回の試合について、「東大は直近の試合でも戦績が五分五分で、ライバルともいえる因縁の相手、それに加えてこの試合は北大の決勝進出が決まる重要な試合だったので、自分たちも選手の方々も燃え上がっていた」と話してくれた。応援する相手の熱量に応え、より熱く応援する、その姿勢はまさに応援団である。

1年の時、応援団のステージにあこがれて入団したという早坂さんは、北大応援団の特徴として扇子や羽織、ほら貝、ぼろ羽織を用いた応援方法をあげてくれた。それらは自分たちの「伝統」と「自由」を表すものであり非常に誇らしいと語る。

ぼろ羽織をまとい応援に望んだ鳩貝さんは、前述した小道具に加えて「電子機器に触れてはいけない」というルールがあることを「うちの応援団のここがすごい」と紹介する。どちらも伝統を重んじる応援団の姿勢に誇りを持っている。

鳩貝さんは自身が身に着けている「ぼろ羽織」についても説明してくれた。「ぼろ羽織」は元々普通の羽織であったが、代々継承していくにつれ切れ衣を足してゆきできたものだそうだ。ぼろ羽織を羽織るものは歴代応援団員の思いを背負い応援にのぞむ。

達成感を感じる瞬間について、選手からの感謝の言葉を受け取った時や、観客さんから「よかったよ」という言葉をかけられたとき、そして応援しているチームが勝利した瞬間をあげてくれた。工夫と凄まじい練習量を思うとその喜びは計り知れないものであろう。

小噺で東大応援団の吹奏楽部門に弟がいると話していた外ノ池団長に、応援団同士でのつながりについて質問をしてみた。七大学の応援団は演舞演奏会の練習や運営で互いにかかわったり、全国での戦いで会うなど交流の機会は比較的多い。七忘と呼ばれる忘年会を開くなど、お互い仲良くしているという。応援団同士の交流では「その喉アイテム使うよね。」とか「暑さでのど飴がとけてくっついちゃうよね。」だとかいう「あるある」が交わされるらしい。

逆にそのような交流の中で、北大応援団はほかの応援団に比べ規則が緩いことに気が付いたと語る。ほかの応援団は「応援団長とすれ違ってはいけない」という厳格なルールがあり、入退場のとき非常に気を付けるそうだが、北大応援団ではそこまで気にしない。そのようなおおらかさの源はなにかと聞くと、「やっぱり、見てもらったらわかる通りうちの応援団は特徴的だから、そのような風土がその”多様性”や”自由さ”を生み出しているんじゃないかな」と答えてくれた。

入学式で総長が語った「北海道大学は多様性と自由が芽吹く場所」という言葉の通り、おおらかな北大生による応援団にはほかにない気質で溢れている。

皆さんも是非、応援団の応援を見に行き、一緒に応援してほしい。応援団の演舞を披露する「演舞演奏会」が今年は17日(日)にクラーク会館で行われる。機会があれば見に行ってはいかがだろうか。

(取材・執筆・撮影:山口)