体育会解散の危機?その実態とは
北大における体育活動とスポーツの振興、会員相互の親睦をはかるため1958年(昭和33年)に創立された北大体育会(以下、体育会)。楽しく安全にスポーツをする機会を北大生に提供しており、過去には北大生の8〜9割が加入していたが、現在は主に体育会所属団体の部員の加入となっている。そんな体育会だが、4月ごろから会員に対する入会費の返金を行っているという噂が流れ始め、一部では体育会自体が解散の危機に陥っているのではとの声が上がった。そこで体育会の現状を知るために取材に向かったが、明らかになった実態は解散の危機ではなく、業務削減のための改革であった。
「コロナウイルス流行前はクラスマッチなどの企画・運営も行っていたが、コロナウイルス流行後の体育会の業務は七大戦の運営だけになってしまった」と語るのは体育会関係者の1人。体育会の運営は、体育会所属団体からそれぞれ1人ずつ派遣して行っているため、運営をする人数が少なく1人1人の負担が重くなっている。加えてクラスマッチなどの企画がなくなり運営に際して資金も必要なくなったため、業務削減に向けて体育会の収入支出をともに0にする方針が、今年4・5月ごろに固まった。

北大第1体育館(撮影:武田)
体育会に入会するためには4年間加入想定で8000円の入会費がかかり(※注1)、これまでの体育会の主な収入は、この入会費であった。そして、支出として半分以上を占めていたのが、所属部活に対する強化費(※注2)であり、その他の支出は体育会紹介冊子「北溟(ほくめい)」の印刷費や通信費等の雑費が占めていた。強化費を受け取る団体は毎年4回、費用の使い道を報告する義務があり、報告をしっかりと行っていた部活に強化費を分配していたという。
では、これまでの収支の釣り合いはどうだったのだろうか。「実際のところ、赤字気味ではあった」と関係者は顔を曇らせた。コロナウイルス流行前は会員数が多かったため釣り合いが取れていたが、流行後は体育会所属団体の部員のみが加入している状況であり、収入が激減してしまい、赤字が常態化していたという。今回の収入支出を0にする改革では、業務削減に付随し、赤字常態化の改善にも希望が見出だせそうだ。
体育会の収入を0にするための施策としては、入会費の徴収を行わないことで意見が一致した。現在加入している会員の負担額も0にするため、今年集めた分や、卒業時までの加入費用として現在2〜4年生の会員からすでに徴収した分も、部に返金するという。「不足時の備えを除きほとんどを返金する予定だが、会員からの反応は特にみられなかった」と関係者。支出0に向けては、主に部活に対する強化費の廃止と「北溟」の廃刊が行われる。強化費の廃止に関しては、「部員からすると、入会の際に自分たちが払った分が戻ってくるだけのようなシステムだったため、反対意見は出なかった」と語る。「北溟」については、冊子に載せる広告の掲載費では印刷費を補えなかったために、やむを得ずの廃刊だったが、元々新入部員の多くはXや部活サークルnavi経由での入部だったため廃刊することに対しての懸念は特になかったという。
現時点では今後も七大戦の運営以外は行わない見込みだという体育会。その背景には運営側の負担増加や赤字の常態化があった。他大学の一部では、大学が体育会に資金を出して、運営を支えているが、北大がそのような取り組みを行う様子は今のところない。今回の改革の結果、体育会は北大の体育活動を盛り上げる存在としてこれからも残り続けるのか。はたまた、新たな改革が必要になってくるのか。体育会の今後に注目が集まる。
(取材:小田 執筆、撮影:武田)
※注1:水産学部生は函館キャンパス移行までの、2年分の4000円を支払う
※注2:競技力向上を目的として各部活に支払われる費用
各部活によって用途は異なるが、主に道具購入や遠征の際の出費に充てられる