恵迪寮 ガスコンロ3箇所に使用禁止命令もその後解除 再発防止策を検討へ

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10月30日、北大の学生寮「恵迪寮」にて、3本のガスホースが溶けているのが消防の点検により発覚した。寮内のガスコンロは約100箇所。安全対策が確認できるまで3箇所のガスコンロは使用禁止となったが、11月5日から6日にかけてガスホースの交換が行われ、使用禁止命令は解除された。

交換されたガスホース。北大からレンジガードも支給された

溶けていたガスホースは、寮生が日常的に使用しているキッチンに取り付けられているものだった。ガスホースは業者によって取り付けられたものであったが、3面のレンジガードは個数が不足していたこともあり、設置の徹底はされていなかった。そのため、ガスホースに火が当たりやすい状態となっており、今回の事案が発生したと考えられる。

発覚の経緯

本件の発覚はいわば偶然のものだった。7月上旬、恵迪寮に2基設置されているボイラーの内、経年劣化により1基が完全に停止。業者による修理の後、ボイラーの稼働に伴う検査のため消防職員が恵迪寮を訪れた。その際にあくまで「ついで」といった形で寮内の点検が行われ、事態は発覚した。

発覚が遅れた理由に、寮長の福島雄大(たけひろ)さん(医学部2年)は寮内の安全意識の低さを挙げる。「ガスホースは露出しており、日常的に使用されていたため寮生も目にしていたはずだが『大丈夫だろう』という考えで気にしていなかったと思う。以前からガスホースは溶け始めていたかもしれない」と話す。恵迪寮では半年に1回、荷物を全て片付け部屋を移動する部屋替えを行っている。部屋替えのタイミングで清掃は行っているものの、安全点検は行われていなかった。

その安全意識の低さには過去の出来事の引継ぎ不足が考えられると福島さんは話す。溶けたガスホースが寮内で見つかったのは今回が初めてではない。2018年には避難経路の確保不足とガスホースの劣化の2点で、消防から厳重注意を受けていた。しかし、過去の指導に関する内容や改善策が十分に引き継がれておらず、当時の寮生も卒業してしまったため、再発防止策が整備されていなかった。チェックリストを用いての安全点検も半年に1回行うとなっていたが、口頭での確認に留まり、形骸化していたという。

2018年から存在しているチェックリスト。ガスホースに関する記述は無かった

自治会は再発防止策を検討へ

恵迪寮自治会は今回の事案を重く受け止め、安全対策を強化していく方針だという。北大側とも協議し、劣化の有無に関わらず行う4年ごとのガスホースの交換や、安全点検のチェックリストの増強などが案として挙がっている。安全対策強化の動きは予定されていなかった消防の点検によるもの。このタイミングで問題が発覚したことについて、福島さんは「危ない状況だと気づけて良かった」と振り返る。

一方、本件に関する大手メディアの報道については思うところもあるという。最初に報道がされたのは5日。その日には既にガスホースの修理は始まっており、使用禁止命令も解除される直前であった。命令が解除された後にもそれに関する報道は行われず、初報も北大や自治会への取材なしに行われた。「『使用禁止命令がすぐに解除されたこと』『今後の再発防止策を大学と自治会で練っていること』を報道して欲しかった」と福島さんは語る。

北大生自身が大部分の棟の自治を行っている恵迪寮。本件を受けて対策が徹底され、安全な寮生活が保たれることを願う。

(取材:安藤、山口 執筆・撮影:安藤)