きっとあなたもいる舞台 ~ハルニレが送る群像劇「パルレ」~
ミュージカルサークル「ハルニレ」の舞台の本番は14日。ミュージカルを披露する彼らは演目を選ぶことが公演準備の第一歩だ。ハルニレでは、部内で開かれる7月の公募を機に、サークルの各自が何を演技したいかを話し合う。過去に一般の劇団で公演された劇を採用するのか、歌も台詞も自作するのか。ハルニレの皆は提案者の発表を聞いて本公演の構想を練る。
今回の本公演で披露するのは韓国が舞台の「パルレ」だ。この舞台への取り組みをサークル代表の堀内陽仁さん(法学部3年)、主演の北原咲来さん(北星学園大学文学部3年)、演技・演出のパクボムソさん(現代日本学プログラム3年)に聞いた。
今回の「パルレ」は韓国からの留学生であるパクさんが作品決めの際のプレゼンを行った。韓国語で「洗濯」を意味する単語のパルレは、舞台へと仕立てられたことによって、世の中で経験する悲しみや惨めさ、怒りを洗い流して目の前の毎日を懸命に生きようという意味を含んでいる。劇の主体は「普通の人々」であり、観客に寄り添った内容だ。

今回の「パルレ」は韓国からの留学生であるパクさんが作品決めの際のプレゼンを行った。韓国語で「洗濯」を意味する単語のパルレは、舞台へと仕立てられたことによって、世の中で経験する悲しみや惨めさ、怒りを洗い流して目の前の毎日を懸命に生きようという意味を含んでいる。劇の主体は「普通の人々」であり、観客に寄り添った内容だ。
今回パルレを提案したのは、劇団と演目の相性を考えてのこと。公募の際は、披露する演目について気をつける点があるという。ハルニレの抱える人員で舞台を成立させられるかという現実性だ。舞台に立つ人の数と登場人物の数が揃わなければ劇は成立しない。このパルレという劇はソウルに住む市民らの群像劇となっている。一人一人が均等に際立つ本作では、「主人公とその周囲を取り囲むたくさんの脇役」という構図をとらずに、舞台上のすべての人物に焦点が当たる。「比較的少人数でも劇が成立するため、サークルの男女比や各自の長所などを鑑みても、この作品の構造がハルニレの体制にちょうどよかった」とパクさんは話す。
劇の練習に向けて、ハルニレでは演目そのものに対する勉強も欠かさない。パルレは韓国で20年以上公演が続けられた息の長い演目であり、韓国にある様々な劇団が演じてきた。数ある公演の中から、ハルニレの特性や演技力に合わせたものを選び、作品の概観をハルニレの中で共有するそうだ。

練習になると、詳細な劇の形をそれぞれが描き出すようになる。各々が考えるパルレの表現を互いに磨きをかけながら高めていくのだ。演目に対する理解度は、公募でパルレを提案したパクさんが最も深い。しかしながら、演技に対する意見は舞台に立つ各自が交換し合う。舞台上の動きは劇をよく知るパクさん、ダンスの場面ではそれが得意な他の部員が考えるなど、考えるきっかけを生み出す人も、それを磨き上げる人もばらばらだ。1人の考えに偏ることなく、舞台を組み上げるのがハルニレのやり方だ。
群像劇であるパルレの中にも大きな役割を担う登場人物は存在し、その役を演じるのが北原さんだ。彼女が演じるのは「ナヨン」というソウルへ上京した若い女性で、厳しい現実に直面する中で、荒んだ心を慰める方法を獲得していく。社会の荒波と人情あふれるご近所付き合いで揺さぶられる感情が、我々観客にも共感できる内心を映し出すという。
しかし、このナヨンを演じる上で、役と自分を重ねることに難しさがあると北原さんは言う。
「ナヨンの設定は27歳で、自分は22歳だから少しだけ年の差がある。この人生経験の差を表現するときに難しい。劇の中にはナヨンがお酒に酔う場面があり、この酔っ払った演技は自分にとって未知のものです。」自身はお酒をあまり飲まないという北原さんは、ナヨンという社会も文化も異なる人物をどのように自身の理解に落とし込めるか苦心していた。「酔う演技について『もっともっと!』と言われるので、韓国で上演されたパルレの演技を見て勉強しています」と笑いながら話してくれた。
一方、韓国を舞台とした劇を上演する難しさは、この劇をハルニレに持ち込んだパクさんも感じている。小道具や服装に対する先入観が互いに違うため、些細な描写にも違和感があったそうだ。「ソウルの下町にある住居では洗濯機が置かれたり、物干し竿が設置されたりする場所として屋上が定番です。しかし、日本では建物の屋上に出ることは機会が少ないそう。他にも、『典型的な八百屋の大将といえばねじり鉢巻き』これは日本特有の感覚だと思います」
セットで表現するとより個人の解釈に委ねられるため、屋上として作ったはずのセットが堀内さんには集合住宅のベランダに見えたそう。
パクさんはパルレを日本語へと訳し変えて、サークルで扱えるようにしている。日本と韓国の同じ点・違う点、それぞれが層になって複合的な色になる点が歌劇の味わいにもつながっている。

この劇を通して、舞台となっている韓国の様子に目を向けるのもよいが、一人一人の暮らしや人柄に目を向けるのもよいだろう。主演の北原さんは「この劇に登場する多くの人物が、観客それぞれに合う生き方を提示してくれると思う」と話す。
そして、演者としても演出としても舞台を支えるパクさんは「それぞれの生き方が重なる交差点がソウルという街。ここで擦れて傷つけ合うのも、助け合って癒し合うのも人間の暮らしだと思う。故郷を超えた物語なので、多くの人が共感できると思います」と語った。
最後に代表の堀内さんから「ハルニレが送る」パルレの魅力を教えてもらった。「ハルニレでは各公演において、各自の担う役割を固定していない。流動的な組織体制だからこそ得られる視点があり、サークルの皆はこれを経験していると思う。学生の新鮮な思いを劇に織り交ぜてミュージカルを作り上げているので、費用や能力の面ではプロと差があるかもしれないが、込めた思いにはハルニレに特別な表現があると思う」
ハルニレが演じる「パルレ」は、14日に札幌市北区のサンプラザホールで上演される。

札幌の舞台に広がるのはソウルの街並み。しかし、そこで生きる人の毎日は海の向こうの喧騒ではなく、きっとあなたがいるこの街の物語だ。
(取材・執筆:吉村 写真提供:ハルニレ)
