【受験特集:どんな道でも、道は道】第7回(2)人生に回り道はない 学びたいことを追って——挑んだ”編入試験”

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編入試験、夏の神戸で

試験当日に神戸大キャンパスから撮影した神戸市街(本人提供)

 7月5日、編入試験1日目。午前中から始まった筆記試験はまずまずの出来だった。出題されたのは力学、電磁気学、熱力学といった物理の王道分野。演習でやった成果は十分に発揮できたが、熱力学だけ上手くいかなかったという。大学1年の年末に趣味で熱力学を勉強していただけに油断があったのかも、と振り返る島﨑さん。合否は五分五分という手ごたえに、「やばいな、心配」と緊張が高まる。

 午後1時に試験が終わって、一次合否が発表される午後6時まで僅か5時間。神戸大の教授陣が受験者の答案に目を光らせている間、島﨑さんは有り余る時間に不安を募らせた。気晴らしにYouTubeを開いて、サンドウィッチマンのコントを眺めた。「気持ちを紛らわせてくれるのは結局笑いだと思うんだよね」。

 ボーダーライン上の手ごたえも、サンドウィッチマンのコントを見て不安を払拭した記憶も、京都大受験のあの時と同じだった。今度はどうか上手くいきますように……時間になって島﨑さんは神戸大のHPを開いた。

 現れた画面に、島﨑さんの番号は無かった。

「そうか……落ちたか、と思った」と島﨑さん。

 ところが、彼は落ちていなかった。画面が左右に動くことに気付いた島﨑さんがピンチアウトすると合格番号一覧の上に「数学科」と書いてあったのだ。慌てて画面を下にスクロールすると、彼が目指す物理学科の欄が見えてきた。

 そしてそこにはちゃんと彼の受験番号があった。あの時ほどに焦ったことは人生で数少ない、と振り返る島﨑さん。積み重ねてきた勉強の成果が実を結び安心する一方で、実はまだ油断はできなかった。

 例年一次試験を通過するのは7人程度。編入合格者が5人程度であるため、筆記試験を通過すれば面接はそこまで心配せずとも良かった。だがこの年、島﨑さんと共に一次試験を突破したのは12人。面接でも合格者を削りに来る、そう感じた島﨑さんはホテルに戻って間違えたであろう問題を復習した。

 翌6日の二次試験(面接)では、島﨑さんが想定していたより和やかな雰囲気で進んだ。「神戸大学で非平衡統計力学を勉強したいと思っています」。志望動機を語った島﨑さんに、6人の教授たちは様々な質問を投げかけた。

 どうやってその分野を知ったのか、どうやって物理を勉強したのか、どうして北大から神戸大を目指したのか。1年半にわたって進路を悩み続けた島﨑さんにとって、過去をありのままに語るだけで十分だった。

 面接が終わった時には「不合格にはならないだろう」という確かな手ごたえがあった。こうして島﨑さんは一路札幌へ帰る。

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