胆振東部地震から1年 厚真町訪問記

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ご無沙汰しております。ATです。先日、昨年9月の胆振東部地震から1年経つにあたり、編集部メンバー数人と地震の中心的な被災地であった厚真町を訪れる機会があったので、そのお話をしたいと思います。地震から1年の節目より一ヶ月も空いてしまいましたが、ご一読いただけると嬉しいです。

1.農家の堀田さん宅にて

昨年の地震で震度7を観測し、地震だけでなく土砂崩れによる被害も大きかった厚真町。新千歳空港から1時間弱のところに位置する農業と林業の町です。まず私達は、以前に取材させていただいたご縁のある、農家の堀田昌意(あつお)さんのお宅にお邪魔しました。堀田さんのお宅は現在改築中で、それだけでも地震の大きさがわかるものでしたが、全壊認定を受けた農機具倉庫を見させていただきました。一見壊れているようにみえない倉庫でしたが、建物の下の部分を見ると地面と基礎が離れ隙間ができている状態。また、柱が斜めになってしまっていました。「基礎がこのように壊れた時点で全壊となる」という堀田さんの話を聞き、使えるように思えても、全壊となっているという矛盾のようなものに、言葉にならないもやもやとしたものを感じました。また、道に沿って真っすぐに建っていたはずのビニールハウスが波打ったようになってしまっているのも教えていただきました。とても大きな被害ではないそうなのですが、このような小さな被害がたくさんあり、それらすべてを修復するのは金銭的にも困難だといいます。「まるでガンのようだ」という堀田さんの言葉が非常に重く感じました。

2.最も被害の大きかった吉野地区

(編集部メンバー撮影)

続いて、土砂崩れの被害が一番大きいとされる吉野地区を訪れました。吉野地区に入ってみて最初に思ったのは、一体以前はどういう風景だったのか想像できない、ということです。数百メートル以上にわたって山肌が見えてしまっていて、道路横には流れていった土砂の山と思われる丘ができ、道路自体も以前とは違う場所に敷き直したようでした。吉野地区は治山工事(山が崩れないようにする工事)が行われている最中でしたが、そこにはまだ地震の前には家であったものや電柱であったものが残されている状況。1年が経過しようとしているなか、復旧・復興はいまだ時間が掛かることを痛感させられました。

3.堀田さんのしいたけ栽培

昼食後は堀田さんのところに戻り、しいたけ栽培のハウスを訪問。堀田さんはしいたけを原木栽培している数少ない農家です(しいたけには原木栽培と菌床栽培があります)。木に生えている状態のしいたけを見るのは初めてで、普段見かけるスーパーなどで売っているものとはやはり生き生きとしている感じが違うなあ、と感じました。また、菌を植えたばかりの木は井形に積み上げられていましたが、これも地震当時崩れ、ボランティアの協力で積み直したそうです。その際のハウスの様子や家の中の様子なども写真で見せていただきました。

4.ハスカップ農家山口さん

その後、堀田さんのお宅でとれたハスカップを試食。ハスカップは厚真町など勇払原野に自生している低木です。細長く青いブルーベリーのような果実が特徴で、その味は酸味が強いですが、少し甘みがあるものです。試食中に「厚真でハスカップといえばこの人」という方がいるという話をいただき、堀田さんに案内され急遽ハスカップを栽培している山口善紀(よしのり)さんの農園へ行くことになりました。山口さんはお母様の代からハスカップを育てはじめ、長い年月をかけた品種改良によって甘いハスカップを生み出した農家さんです(「ゆうしげ」と「あつまみらい」の二つで、どちらも品種登録されています)。山口さんがハスカップで有名なのは、厚真町をハスカップ栽培面積日本一にしたことと、先ほど述べた2品種の登録を行ったことで、厚真のハスカップ産業を牽引してきたためです。その山口さんの農園も、地震の大きな被害を受けていました。農園の裏は高台になっており、土砂崩れによって数百本のハスカップが土砂の下敷きに。現在でもハスカップが埋まっていると、現場を見せていただきました。当時、どうしていいか分からなくなったという山口さん。数日後にはデパートへの出店をひかえていました。それどころの状況じゃないと周りから言われながらも、ここまでハスカップの町として厚真町を盛り上げてきた山口さんは、厚真町が「震度7の町」と呼ばれるようにはしたくない、その思いからデパートの出店をあきらめなかったそうです。

5.厚真のおいしいもの

締めの前に、今回厚真ではおいしいものもたくさん頂きました。お昼は中心部でジンギスカンを実食。ジンギスカンといっても食べたのは「あづまジンギスカン」です(厚真町の地元の方は、「あつま」ではなく「あづま」というようです)。タレに漬けた味付きジンギスカンで、焼いても堅くならないおいしいお肉に思わず口元が緩んでしまいました。また、山口さんのお話を聞いた後、ハスカップを使ったソフトクリームやスムージーを販売している、「ハスカップカフェLabo」を紹介していただき、ハスカップスムージーを私はいただきました。すっきりとした味わいで、甘ったるくないのが特徴。酸味が抑えられており、山口さんから聞いた長年の品種改良のお話を味覚で感じられる一品でした。

6.おわりに

この訪問を通して一番感じたものは、厚真町でお会いした農家さんの信念の強さ・太さです。私達がお聞きした部分はほんの少しなので、私達からは想像できないほどの苦悩・苦難があったことだと思います。でもそのなかで前を向いて進んでいこうとする姿勢に、さまざまな葛藤があったことを感じつつ、稚拙な表現になってしまいますが、心を動かされました。つらいときに強い思い、心に決めたこと、それを頼りに進んでいく。自分自身のこれからについても考えさせられる訪問となりました。また厚真町には、ハスカップ狩りのシーズンである6月下旬~7月下旬にぜひ訪問したいものです。