本学学生チームが「学生のノーベル賞」地区予選で日本勢初優勝 次戦に向けクラウドファンディングを実施 ―ハルトプライズ

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地区予選で優勝したアクアモウのメンバー。リーダーのチュクさんは右から2人目(同チーム提供)

4月に東京で行われた「ハルトプライズ」(国連が後援する世界的な学生コンペ大会)の地区予選で、本学留学生らの学生チーム・Aquamou(アクアモウ)が公式地区予選としては日本勢で初めて優勝を果たした。同チームは7月に英国で行われる強化合宿参加のための渡航や試作品製作などにかかる資金を賄うため、7月13日までの間クラウドファンディング(CF)で支援を募っている。

本学の研究成果「スーパーフィッシュ」活用で食糧難と若者の失業問題を解決へ

ハルトプライズは、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)達成を目指して学生が起業アイデアをプレゼンテーションする国際的なコンペ大会だ。「学生のノーベル賞」とも言われ、国連が正式に後援。9月に国連本部で行われる最終プレゼンで優勝したチームには100万ドル(日本円で1億円余り)が贈呈される。大会では毎年異なるテーマが与えられ、今大会では「今後10年以内に、1万人の若者に有意義な仕事を提供するベンチャーを創出する基盤を作ること」がテーマだった。

アクアモウ(海を表す”aqua”と、ネットワークを意味する”網=mou”を組み合わせた名前)は留学生3人と日本人学生1人によるチームだ。成長の速い個体を通常よりも多く生み出せる「スーパーフィッシュ」の技術を活用するなどし、養殖漁業でアフリカの食糧難と若者の失業問題の解決を目指すアイデアを考案。学内コンペを経て4月27~28日に東京で開催された地区予選では、京都大学などの約50チームを破って優勝した。本学学生チームの優勝もさることながら、日本勢の地区予選突破は初の快挙だ。同チームリーダーで本学水産科学院修士2年のチュク・イフェアニーさんは、「優勝した時は驚いたが、同時に自信にもつながった」と振り返る。

チュクさんはアフリカ・ナイジェリア出身の留学生。アフリカ原産の淡水魚・ナイルティラピアの養殖技術の研究のため本学で学んでいる。ナイルティラピアはオスがメスの約2倍の速さで成長するが、オス・メスの見分けが難しいことがナイジェリアでは課題だったという。そこでチュクさんらは本学で開発されたスーパーフィッシュの技術に着目。成長の速いオスのみの養殖の実現を提案するに至った。

今回用いた技術では魚が孵化(ふか)して間もない時期に、餌や水を通じてE2と呼ばれる特殊なホルモンを与えることでオスをメスに変える。そのメスと別のオスとの交配により、遺伝子組み換えはせずにオスのみを養殖することが可能となる。この一連の手法をナイルティラピアの養殖に応用しオスのみを養殖できるようになることで、生産性向上が期待できるという。

アクアモウのメンバーとナイルティラピア(同チーム提供)

渡航費用と養殖水槽の試作品製作費用などをクラウドファンディングで

同チームでは必要経費を賄うため、6月中旬から7月13日までの期限でCFでの寄付を募っている。目標金額は100万円で、7月に英国で開催されるブートキャンプ(強化合宿)参加のための渡航費用や大型水槽の試作品の製作費用、ナイジェリアで行う現地調査費用などの調達を目指す。英国での強化合宿では世界各地から集まった地区代表の40チームが競い合い、それぞれのアイデアに磨きをかけるとともに、国連本部で最終プレゼンテーションを行う6チームが選抜されるという流れだ。

同チームの取り組みを支援している本学人材育成本部の飯田良親客員教授は、「水産科学院の学生が研究する本学独自の魚を事業化し、専門の異なる留学生と日本人学生が力を合わせて社会課題解決に取り組む点が高く評価された」とした上で、「起業には困難を克服する力が必須で、その第一歩が英国までの渡航費獲得と、事業立ち上げ資金の確保だ。その為に彼らは日本語でCFのサイトを立ち上げた」とCFに至った経緯に言及。幅広い支援を呼びかけている。

チームリーダーのチュクさんが大切にしていることは“You can achieve what else your dream is !”(どんな夢でも実現できる!)。「(他の学生にも)私たちメンバーのように大きな夢を持ってほしい」と語る。大志を抱く本学学生の夢の実現に向けて、支援の輪が広がることに期待と注目が集まる。

CFのURLは https://actnow.jp/project/aquamou/detail

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