現代に必要なデジタルリテラシーを身につけるオープン教材を公開 ―北大オープンエデュケーションセンター

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本学オープンエデュケーションセンターは10月中旬にデジタル社会を生き抜くために必要なデジタルリテラシーを身につけるための教材を公開した。誰でも自由に利用できるオープン教材として、2019年から共同研究契約を結んでいるアドビ株式会社と開発。同教材は学内での活用が既にされており、今後は改良したものを学内外を問わない一般向けのオンライン講座で使用することなども検討されている。

同教材では3番目の「Digital content creation」に焦点を当てる

デジタルリテラシーは1990年代以降関心が集まっている能力で、デジタル社会を今後生きていく若者だけでなく、世の中を生きる全ての人々に必要になるとされている。2018年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)がデジタルリテラシーグローバルフレームワーク(DLGF)として国際的な枠組みを策定したことで、育成すべき能力の認識が高まった。

同教材はDLGFで7つに分けられた領域のうち「デジタルコンテントクリエーション」に焦点を当てる。例えば、動画共有サイトの再生画面で再生ボタンをクリックするよう誘導されるのはなぜか、「デザイン」をする上で大切な姿勢とは何かということを考えるなど、デジタルプロダクトの読解・設計・制作を学べる内容となっている。

再生ボタンにクリックが誘導される要素を学ぶ
(Ⓒ北海道大学オープンエデュケーションセンター 2021年 https://sites.google.com/huoec.jp/digital-literacy/

開発を担当する本学オープンエデュケーションセンターの重田勝介准教授は「かなり様々なデジタルリテラシーの領域がある中で、まずそのうちの一つの領域を押さえたものを作ったことが一つのアピールポイント」と話す。また、同教材は学び方に特徴を持たせている点も強みだという。「デザイン思考」と呼ばれる「観察→アイディア創出→プロトタイピング(試作)→テスト」を反復する学習サイクルを取り入れており、ただ読んで覚えるのではなく実際に手を動かす内容を含めることで、より効果的に学べるよう工夫がなされている。

具体的には、教材の始めと最後に学習する単元に関する同じ内容の質問(キークエスチョン)を配置。最初の質問で自分の現状や疑問点などを明らかにした上で学習を進めていき、最後の質問ではその単元で身につけた知識や考え方を実際に活用して答えることで、達成状況を学習者が理解できるようになっている。また、全体を通して読解・設計・制作の順に学習を進める流れになっているのもデザイン思考を採用したためだ。

キークエスチョンでポスターの改良案を考え「デザイン」とは何かを学ぶ
(Ⓒ北海道大学オープンエデュケーションセンター 2021年 https://sites.google.com/huoec.jp/digital-literacy/

同教材は重田准教授が担当する全学教育科目の一般教育演習の授業で既に活用されている。同授業ではデジタルリテラシーを学びつつ、履修者自身が暗号化技術や仮想通貨など、情報社会を生きるというテーマに合致するものについての教材を作ることをゴールにしている。そこで今回のオープン教材を使って履修者がコンテンツ制作の基礎を学べるようにしているという。

オープン教材の活用の今後については、来年度以降同授業が主題別科目になることに併せて、同教材を使ってより幅広いデジタルリテラシーを学べるようにする予定だ。また、オープンエデュケーションセンターでは学外者でも利用できるエルムスのような学習管理システム(LMS)を新たに構築することで、学外の人が本学で学ぶことをサポートしたり、講義を行ったりできるような環境の整備を進めているという。そこで現在の教材を改良した上でデジタルリテラシーを学べるオンライン講座を運営することを計画しており、重田准教授は「21年度末から22年度ごろ受講できるように準備を行っている」と話した。