新種のカイミジンコを発見 高山帯に生息する種は国内初 ―北大理学院などの研究グループ

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今回見つかった新種「シバレドウクツカイミジンコ」(宗像さん提供)

本学大学院理学院博士後期課程の宗像(むなかた)みずほさん、同大学院理学研究院の角井敬知(かくいけいいち)講師、葛西臨海水族園の田中隼人動物解説員の研究グループは、北海道大雪山系の高山帯河川から新種のカイミジンコを発見した。高山帯に生息するカイミジンコの発見は国内では初めてで、今後同属の分布形成史などの解明に貢献することが期待される。

カイミジンコは左右に2枚の殻をもった小さな甲殻類で、多くの水域に生息し、北大の大野池や花木(かぼく)園などにも生息する。宗像さんは、カイミジンコを研究対象としその分類を行っており、国内高山帯でカイミジンコが発見されていないことに着目し研究を始めた。

研究グループは2020・21年の夏に大雪山の雪解け水と地下水に由来する川(北海沢)でカイミジンコの採集を行った。川底に堆積した砂利をバケツでかくはんして、浮いてきた生物を採取する方法が用いられた。20年に新種の個体を発見し、21年には種の報告に十分な個体が得られたという。採集後、カイミジンコの殻やその中の形態を観察し、DNAの採取を行った。殻の形や肢に生える毛の数などの特徴の組み合わせが他の種にないものであったことなどから、新種であることが明らかになった。

採集の様子(宗像さん提供)

また、今回発見された種はメスのみで繁殖する可能性があるという。この特徴について宗像さんは「カイミジンコの特に陸水に生息するグループにもこの性質を持つ種がいる。そのメカニズムは明らかになっていないが、共生するバクテリアの影響であることが予想されている。バクテリアの存在と生殖形式の相関データを蓄積することで、そのメカニズムを明らかにすることにつながるかもしれない。」と話した。

加えて、宗像さんが実際に飼育したところ6か月以上脱皮しなかったことから、成長速度が遅く寿命の長い種であることが予想されるという。このことから性的に成熟するまで1年以上かかると考えられている。

新種の和名は「シバレドウクツカイミジンコ」で、北海道の方言で寒さを表現する「しばれる」が用いられている。北海道で見つかった新種であり、採集を行った川の水が冷たく手が冷えたことなどから名づけられた。

今後について、宗像さんは西日本の高山での採集や、今回の種が高山帯に生息している理由の解明などをしたいと語った。