都市に住むキタキツネ、人間はどう共生すべきか?

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北大内に生息するキツネのつがい(2012年2月12日撮影、池田講師提供)

近年、札幌市内の公園に暮らすキタキツネが目撃されることが増えてきた。都市に暮らすこれらのキツネは「アーバンフォックス」と呼ばれ、注目を集めている。本学構内でもキツネの生息が確認されており、夜間などにその姿を見ることができる。キツネとヒトとの相互作用に興味を持ち研究を始めたCoSTEP(高等教育推進機構・科学技術コミュニケーション教育研究部門)の池田貴子特任講師に、その生態と関わり方について聞いた。

キタキツネとは

キタキツネは北海道や樺太などに生息する。通常は夜行性で、ネズミ・カモ・ウサギ・昆虫・木の実などを食べる雑食。外敵が少ないため、人里に近い森林や公園などに住む。害獣としての被害はクマやシカに比べ小さいとされ、共生に向けた道の対策が追いついていない現状がある。

月寒公園にも生息

池田講師が調査に直接関わっている月寒公園には、キツネの巣が5つほどあり、1・2家族が生息していると考えられている。公園ではキツネに親近感を抱く人が多いが、苦情を入れる人もいるという。「威嚇された」「攻撃された」などの声があるが、基本的にキツネは体力を温存するため自分から攻撃することはないそうだ。攻撃するのは、人から食べ物を取るときか自分の縄張りに侵入されたときだけだという。

餌付けによる被害

定期的に餌付けをする人がいるため、キツネは人を恐れなくなってしまっている。公園は餌付けを禁止しており立て看板も設置しているが、現在も被害は続いている。餌付けによる間接的な被害として「疥癬(かいせん)」というキツネの皮膚病が挙げられる。池田講師は「疥癬にかかっている個体は淘汰されるべきだが、これらの個体が餌付けにより生き延びて感染が広がってしまう」と話す。実際に月寒公園でも疥癬が原因で何頭か死んでいるそうだ。

エキノコックスの感染リスクと対策

エキノコックスはキツネを媒介してヒトに感染するという特徴があり、北海道では毎年数十人程度の感染が確認されている。「全てのキツネがエキノコックスにかかっているわけではないが、そう思って行動した方がいい」と池田講師は警鐘を鳴らす。感染対策としては「感染の原因となるフンは触らない、キツネが逃げない距離までなら近づいてよいが、呼び寄せるための餌やりはしない」などがあるそうだ。また、現在札幌市の4つの公園で散布しているベイトは配布に費用がかかるため、行政による支援が必要だという。

キツネとの共生に関して池田講師は「適度に距離感をとることに尽きる。『仲良し』ではなく距離感を保ちキツネ本来の生き方を尊重することが大事だ」と語る。共生のためには、私たちの心がけも大切だろう。