トレセンに鍵付きロッカー設置の一方でサークル会館では新対策なし 4月の窃盗事件を受けて
4月中旬、本学のサークル会館とトレーニングセンター(以下、トレセン)や体育館で学生を狙った(北大新聞4月17日『北大サークル会館周辺で窃盗か 少なくとも5人に被害』を参照)が多数発生した。現金のみを盗むという犯行が多かったが、中には現金だけでなく、カバンごと盗まれるという手口も見られた。この事態を受け、大学はトレセンの更衣室に鍵付きロッカーを導入することを決めた。一方でサークル会館では新たな対策は行われず、防犯対策には課題が残る。学生の防犯意識の向上が求められている。
サークル会館やトレセンでは本事件以前にも、窃盗への注意を呼びかけるポスターの掲示、貴重品ロッカーの利用の推奨、警備員による巡視などが行われていた。しかし2023年の6月から8月にかけて盗難が複数発生しており、窃盗を防ぎきることはできていなかった。大学側の対策不足と学生側の貴重品管理への意識の薄さが要因として挙げられる。
新たな対策が行われるトレセン
大学は今回の事案を受け、現在鍵がついていないトレセンの更衣室のロッカーを、遅くとも7月中には全て鍵付きにすることを決定した。以前から鍵付きの貴重品ロッカーはあったものの更衣室内にはなく、また今回盗まれたパソコンなどの大きなものが入るサイズでは無かった。
大学はこれまでも更衣室内に鍵付きロッカーを設置することを検討していたが、費用の面やロッカーが専有される恐れを考慮し、設置を見送っていたという。しかし今回、警察からの助言もあり、全面的な導入が決まった。
各団体での対応が求められるサークル会館
サークル会館には、トレセンと同様に事件前から貴重品用の鍵付きロッカーと窃盗への注意を呼びかけるポスターがある。また、大学は4月16日の窃盗事件を受け、10日後の26日に館内の掲示板や廊下などに新しいポスターを掲示した。
さらに同じタイミングで、各公認学生団体の代表者宛に持ち物の管理についてサークル内で周知するよう指示した。事件発生から周知の間にも他の窃盗事件が発生したが、タイミングについて、学生支援課の担当者は「事件のあった次の日に報告を受けており、他の事案との関連性など、概要を把握するのに1週間程度かかる。周知のタイミングは必ずしも遅いものではない」と述べた。
また、ELMSなどでの学生全体への周知ではなく、学生団体の代表者に周知を行ったことについては、「(利用者が固定されている)サークル会館に対しては代表者への周知がもっとも効果的だと考えたため」と回答した。
しかし、サークル会館の建物としての防犯体制に疑問が残る。建物の外周に自転車置き場などを管理する防犯カメラはあるが、建物内に防犯カメラはない。また、サークル会館の正面玄関以外の出入口には管理人室が面していない上に、管理人が出払っている時間帯もある。そのため外からの人の出入りを完全に管理できているとは言えない。
これまでも、もはや毎年のように発生する窃盗事件に対して。大学は学生への周知などを行ってきた。その一方で、人が盛んに入れ替わるサークル内での周知には限界があり、ある程度時間が立てば忘れられていくのが実情だ。
学生支援課の担当者は課外活動施設での窃盗対策について、「大学としても対応はできる限りしていきたいと思っている」としたうえで、「まずは自分の財産については自己防衛をすること、これが第一だと考えている」と語る。大学が行う窃盗対策については、「もし窃盗対策が何もないというのであれば大学側の責任もあると思うが、どちらかに依拠してはいけない」と述べた。「管理の徹底・啓発によって、盗難はすぐにゼロにはならなくとも減らしてはいける」と、大学側と学生側の双方の対策が必要不可欠だとした。
対策の難しい課外活動施設 防犯意識の継承急務
物品・財産の管理に学生側が責任を負うサークル会館では、大学が新たに対策を講じる予定はない。各団体、各個人での防犯意識の向上と維持には工夫が求められている。ただ、4月のカバンごと盗まれるような事態は、単に防犯意識の薄れによって発生したとは言えない。例えば、カバンやパソコンは鍵付きのロッカーに入らないことや、部室等ではなく廊下や空いたスペースに荷物を置かざるを得ないとといった、構造的な問題があったことを示している。
大学は対策を常に検討してはいるが、サークル・部活動の活動上の利便性や費用の面を考慮すると、大規模な対応は期待できない。ただ、大学の財産である課外活動施設で起きた犯罪行為に大学が責任を負っているのは言うまでもない。大学での盗難被害を減らすため、また自分が被害者になってしまわないため、各学生団体内での防犯意識の継承、そして学生一人ひとりが今一度「自分の財産は自分で守る」という意識を持つことが求められている。
(取材・執筆・撮影:高野・木本)