月形町の課題解決に学生や社会人が挑戦 第3回ツキビズキャンプ開催される
2025年12月12日、月形町(つきがたちょう)の月形町交流センターで起業プログラム「ツキビズキャンプ」の最終発表が行われ、3人の北大生を含む学生・社会人計10人が発表に臨んだ。
ツキビズキャンプとは
「ツキビズキャンプ」とは、北海道月形町で行われる開業・起業育成プログラムで、今回の開催が3回目。参加者は約1カ月半にわたって地方での起業を学び、事業の考案・発表を行う。最優秀賞を獲得した参加者には起業資金として10万円が支給される。
このプログラムの舞台となる月形町は、札幌から車で1時間ほどの場所にある。肥沃な大地に位置しており、稲作を中心とした農業が盛んである。一方で飲食店の不足や空き家の増加など、地方ならではの問題を多く抱えている。参加者たちは月形町の課題に向き合いながら、町の魅力を生かしたビジネスのアイデアを生み出していく。今回取材したのはこのプログラムの集大成である、参加者が考案した事業の最終発表だ。
第1回ツキビズキャンプで優秀賞・伴走支援賞を獲得した西岡佳子(けいこ)さん(医学部4年)は、現在民泊事業の開始に向けて準備を進めている。西岡さんは自身の事業を拡大させながら、他のキャンプ生の事業のブラッシュアップなどのサポートを行っている。「北海道には魅力的な町とそこで生き生きと活動する学生がたくさんいる。それを多くの人に知ってほしい」と語り、今回の最終発表もそのきっかけの一つになればと考えているという。

今回の最終発表には、社会人7名、学生3名の計10名が参加した。参加した学生はいずれも北大生で、社会人は業種も多岐にわたる。多様な職業の社会人と、学部の異なる学生が一堂に会し、それぞれのバックグラウンドを生かした月形町を盛り上げるビジネス案が持ち寄られた。
大学からの案内をきっかけに参加したという佐々木健大さん(法学部3年)は、「ツキがきれいですね」と題した月形町での「小旅行ツアー」の案を発表。自身の少し特殊な経歴と大学生活の中での気づきから、このビジネスを考えついたという。
月形町に「青春の明るさ」を
釧路出身の佐々木さんは、釧路公立大経済学部で3年間を過ごしたのち、2025年に北大法学部に3年次編入。釧路での学生生活や、北大編入後に出会った編入生との会話を通じて、北海道の地方に向けられるまなざしの存在を意識するようになっていった。「北海道で生まれ育った自分にとっては当たり前だった風景が、道外出身の友人にとっては特別に映っていることに気づいた」という佐々木さん。そういった発見をビジネスに生かせるかもしれないと感じ、ツキビズキャンプへの参加を決めた。
佐々木さんの案は、本州出身の大学生を主な対象に、月形町を拠点とした小旅行ツアーを企画するというものだった。札幌などの都市部ではなく、あえて地方を訪れたいというニーズに着目。町の自然や日常を体験として切り取ることで、町の課題である「観光コンテンツの不足」の解決や、月形町の新たな魅力発信につなげる狙いがある。

ツアー名に掲げた「ツキがきれいですね」には、月形町の夜空の美しさだけでなく、若者が地方で過ごす時間そのものを肯定的に捉えたいという思いを込めた。佐々木さんは「月形町に一時的にでも滞在し、仲間と過ごす時間が、その人にとっての“青春”として記憶に残るような体験をつくりたい」と語る。
発表後の質疑応答では、実現可能性や収益構造について鋭い質問が相次いだが、佐々木さんは「仮説を立て、実際の町で検証すること自体に価値がある」と応じた。今回のツキビズキャンプを通じて、頭の中にあった構想を具体的な事業案として言語化できたことが大きな収穫だという。

月形を明るくする第一歩へ
他にも参加者らが自身の経験や思いを活かしたビジネス案を次々と発表し、活発に質疑応答を行った。
最優秀賞を獲得したのは、「就労継続支援B型事業所『青い花』」という障がい者作業所を設立するビジネス案を発表した、切り花農家の金澤桃子さん。障がいを持つ弟を間近で見てきた経験を活かし、”障がい者が夢中になり生き生きと働ける、切り花を作る作業所”を設立する案を発表した。審査員からは「発表者の中で最もその人がやる意味があると感じさせられた点が大変良かった」と評され、自身も「すぐに出来る計画ではないが、必ず完成させたい」と意気込んだ。
今回のツキビズキャンプでは、参加者それぞれが自身の原体験や関心を出発点に、月形町という町と向き合った。1カ月半に及ぶプログラムの中で、参加者たちは町に足を運び、人と話し、仮説を立てて考え続けた。すべての案がすぐに実現するとは限らないが、月形町を盛り上げる第一歩となったに違いない。
(取材・執筆・撮影:赤松・木本)
