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北大にホテルなど誘致で収入増へ 総長解任問題は未決着で検証必要 —宝金清博氏【北大総長選インタビュー】

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宝金清博氏(同氏提供)

北海道大学病院の病院長を2018年度まで6年間務めた宝金清博氏は、指定国立大学法人の申請や、ホテル誘致といった不動産運用での収入増などの政策を打ち出す。インタビューでは、コロナ下でのオンライン授業や新入生の環境に問題意識を示し、早急に対応する方針を明らかにしたほか、総長の資質として病院長の経験があるなどと述べた。総長解任については、問題が決着していないとの認識で、検証していく考えだ。

——現執行部の評価できる点と不十分な点を研究・教育・経営のそれぞれで教えてください。

「評価できることは、総長不在のなか(理事のうち)教員3人でご苦労された。獅子奮迅の活躍をされ、ご立派だった。評価点についてそれ以外は実際なかなか厳しい」

「研究で評価できないのは、指定国立大学法人。3年前に目指したが、九州大などが応募するなか北大だけが応募にも至っていない。応募できる体制を作り上げ、書類準備には持ってかなければだめだったのではないかと思う。教育は淡々と進むもので特別不十分な点があるとは思っていない」

「経営で一番大きいのは、国からの運営費交付金。そのうち共通指標により(大学間で)傾斜配分されるものが芳しくなく、(今年度)交付金がさらに低下したのが課題だった。また、総長不在でやむを得なかったと思うが、大きな外部資金や企業との連携で力不足だった。大学はいま、社会と連携することで生きていける。企業や文部科学省といった行政などと繋がるのに総長は顔になる。『社長』のいない会社とは付き合えず、代表者がいないのはまずかった」

——それを踏まえた目標は何ですか。

「指定国立は絶対に取るように簡単ではないが努力をする。指定国立は大学の新たなランキングづけだと思う。(指定国立に応募・認定された)トップ10大学が形成されつつあり、そこに入れないのはまずい。プライドの問題ではない。指定国立になる過程で単に要件を満たすだけでなく、教育環境など色々なところが整備され、成長する」

「教育はもともと我々の思う以上に評価が高い。これを伸ばせばいいが、ひずみも沢山出てきている。一つはオンライン。1年生は人間関係の疎遠など精神的、また経済的な問題があり、教育環境はコロナで悪くなった。長い時間待っていられず、数カ月以内に何とかしないといけない。また、実習の問題がある。オンラインの課題が直近では大きく、学生さんが安心して受信できるようハードの充実を考えている」

「博士課程に進学する人が減った。大学や社会の問題であり、環境整備を考えたい。一つは経済的な支援。もう一つは、社会の産業構造が大きく変わるなか、起業力を大学院教育で身に付けられるという魅力を作っていきたい。どういうカリキュラムにするかが課題だが、例えば企業出身者を呼ぶなどが考えられる」

——経営については。

「経営では、『経営的収入』を増やす。教員に負担をかけず、大学が収入を得るという総長の大事な仕事の一つだ。牛乳や肉といったモノの販売や、ネーミングライツによる収入には限界があり、①コンサルティング企業の設立②ベンチャーキャピタル(VC)の設立③アセットマネジメント(不動産運用)——に注力する。コンサルでは、契約を基に大学の持つノウハウを社会に還元する。指定国立大学は全てVCなど(投資して株式売却益を得る)投資会社を保有する。不動産について、北大は極めて優良な土地を持っており、ホテルや学会場など教育研究にかかわる施設を誘致する。地代をもらい、建物は民間が作るビジネスモデルで、多くの収入を得られる」

「経営的収入は10年以内に年間50億円を目標にする。これと、運営費交付金のうち(客観的指標により)傾斜配分される分の改善により、人件費削減を止めたい」

「いまの国立大学は自分たちの力で稼ぐ方向にあり、大学の在り方は変わってきている。新しい方向に向かないといけない。(国立大学には制約があり)文科省は仲間だが、規制緩和などの発言ができる総長を目指す」

——今回、総長選の候補者になった理由は何ですか。

「総長不在などのなか、自分ではなく北大のために尽くしたいと思った。病院長として300億円(年間)、2500人の規模がある病院を動かしてきた実績があったのも理由だ」

——総長に適しているご自身の資質は何と考えていますか。

「経験値があることだ。北大病院で6年間、病院長をしたのは歴代で自分しかいない。その中で地震などのリスクマネジメントを経験してきた。もう一つは、日本学術会議会員などを務めてきて中央省庁や企業との人脈が広い。また、外科医として相当厳しいところを渡り歩いてきて、危機管理能力みたいなものがある」

——コロナについてチャンスととらえている点は。

「一番大きいのは、オンラインで世の中が首都集中から分散になる。知り合いの企業の人も地方に移った例があり、北海道にいることが不利ではなくなる。研究や運営で有利に働く大事な機会になると考えている。また、この社会が元に戻ることは考えない方が良い。行ったり来たりはするが、基本的に分散とIT(情報技術)化は止まらないだろう」

「コロナの後にも別の感染症や気候変動など次の困難が来るという危機管理の時代だ。むしろコロナ下で変化に対応できる大学を作る良い機会だ」

——総長の解任についてさらに検証や説明をされたい考えはありますか。

「もちろん傷ついた人は守らないといけないが、本当に名和先生にそういうことがあって、個人の問題として不適切だったのかを含め様々なことを検証する場を設けないといけない。北大の名誉に関わることは考えないといけないが、この問題は決着したとは思っていない。何らかの形で検証委員会を作る」

——学生サービスについて取り組まれたいことはありますか。

「コロナで困窮している学生さんへの経済的支援を最大限考えたい。IT化のなかで学生さんに十分な環境がない場合は、タブレットやWi-Fiを考えないといけない。アンケートなど調査をする。また、博士課程の進学減少が経済的理由であれば、(学生を雇用する)ティーチングアシスタント(TA)などをさらに強化したい」

——北大のプレゼンス(存在感)を高めるためには。

「良い意味でメディアに総長は出るべきだ。北大をアピールしたり、色々な人とコミュニケーションしたりする大学の顔。そういう意味で総長はきわめて重要だ」

——所見で事務のオンライン化を掲げていました。

「オンラインは始まったばかりで負荷になっているが、今後、会議の合理化、書類のIT化をさらに進め効率化する」

<プロフィル> ほうきんきよひろ 1979年北大医学部卒。92年北大講師、2001年札幌医科大教授、10年北大教授、13年同大病院長などを経て19年同大保健科学研究院特任教授。脳神経外科医で脳科学領域が専門。65歳。

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