【受験特集:どんな道でも、道は道】第4回(1) 将来の夢は、日本で見つけた 梁冠宇さん(水産学部4年)

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「大学には、いろんな人がいる」そんな言葉は、誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。だが、私たちはまだ「いろんな北大生」が北大生になった時の話を知らない。聞けそうで聞けない、在りし日のそんな話を取り上げるのが今回の特集「どんな道でも、道は道」だ。はたから見れば小さな、でもそばにいれば大きな選択にじっと耳を傾ければ、等身大の北大生が見えてくる。

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今回の主人公は、台湾出身の水産学部4年生、梁冠宇(りょう・かんう)さん(22)=台湾・新北市立板橋高級中學卒業=だ。留学生、と聞くと交換留学制度による留学生や海外出身の大学院生を想起しがちだが、学士課程において日本人学生と全く同じカリキュラムを4年間履修する海外出身の学生についてはよく知らない読者も多いのではないだろうか。「190cmのムキムキマッチョだって書いてね」とジョークを飛ばす陽気な梁さんの経歴に、記者が迫った。(取材:田村)

現在の梁さん(本人提供)

研究がしたい、海外に行きたい

台北で海鮮料理店を経営する両親の元に生まれた梁さんは、幼いころから漁業資源の活用に関心があったという。研究職に就きたいと考えていた高校時代に志望大学を決める際にも、重要視したのは海洋資源研究を行う環境が充実していることだった。

しかし、台湾において水産学が学べる唯一の大学は梁さんの理想とはかけ離れていたようだ。「自分はバリューチェーンとかも含めた水産資源の利用にも興味があったけど、あそこは養殖技術しか教えてくれないです。講義内容も薄いし、学部の3、4年生が毎日のように水槽を洗わないといけないって進学した友達もあとで言ってたよ。一応受けて合格はしたけど、やっぱり行くのはやめた」と梁さん。台湾では十分に学べないと思ったことが、留学の動機になった。

とはいえ、海外留学を経験した日本人の体験談に欠かせないのは親の説得に苦労した話だ。言語や治安の問題を気にするのは万国共通かと思って梁さんにも聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「台湾の学生は大学院でほとんどみんな海外に出るから、反対されることはほとんどないです。母親が日本の大学にいたこともあるし、日本なら治安も心配ないって言われました」

そして、梁さんは2017年9月に来日する。留学先を決定する際には自らの留学経験からイギリスを推す父親と日本への留学を推す母親とがやや対立したこともあったが、日本行きの決め手となったのは学費が安い点と漢字文化圏であるため言語習得が容易な点だったようだ。

日本語は全くできなかったが、日本で学ぶ水産学には胸が膨らんだ。たくさんの日本語テキストと大きな夢をキャリーバッグに詰め込んで飛行機へと乗りこんだ梁さんが日本語を習得する話は、次章に譲りたい。

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