【受験特集:どんな道でも、道は道】 第3回(5) 勉強だけがすべてじゃないけど、受験勉強するといい 黒川滉太さん(文学部2年)

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「大学には、いろんな人がいる」そんな言葉は、誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。だが、私たちはまだ「いろんな北大生」が北大生になった時の話を知らない。聞けそうで聞けない、在りし日のそんな話を取り上げるのが今回の特集「どんな道でも、道は道」だ。はたから見れば小さな、でもそばにいれば大きな選択にじっと耳を傾ければ、等身大の北大生が見えてくる。

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今回の主人公は、文学部2年の黒川滉太さん(22)=徳島・県立城ノ内高校(現・県立城ノ内中等教育学校)卒業=だ。英語の授業で記者と初めて会った時に「一度入った大学を自主退学して北大に入学した」とあっけらかんと話してくれたその姿を見て、特大スクープよりも友達の記事が書きたいと初めて思ったことを覚えている。合格して喜んだ後の話が聞きたい、と取材を申し込むと二つ返事で引き受けてくれた黒川さんの道のりに、記者が迫った。(取材:田村)

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現在の黒川さん(本人提供、写真の一部を加工しています)

結局は、自分で自分を変えること

本学入学後の黒川さんは、本学に入ってから友達に触発されることが増えたと語る。
「1年生の最初の方はなんとなく過ごしてたんやけど、北大祭の事務局長になった基礎クラスの友達を見てやる気になった。『わざわざ大学変えたんなら、もうちょいおもろいことしたいな』って」 

「留学がしたい」と新たに目標を決め、成績も伸ばした。
「英語でしゃべる英語の授業は正直行きたくない時もあったけど、それでも頑張ろうと思えた。北大のサマーインスティテュート(注1)にも、思い切って参加した」
「自分の努力で成績が上がったあたりで自信がついて、一気に他のことにも挑戦するようになった。サークル・バイトもかけもちしたり、国際インターンシップ(注2)にも応募したり」 

ただ、意外にも大学での成績についてはあまり気にしすぎないようになったという。
「前の大学にいた時は勉強が大学生活の全てやと思ってたけど、勉強以外にやることがたくさんできたから評定も基準の一つだと思うようになった。今はがんばったら単位がもらえる、ってのも大きいな」 

最後に、黒川さんは受験においてより上位の大学を目指す意義について語った。夢を叶えるために勉強しろ、などといった議論も一般にはみられるが、黒川さんの意見はむしろ逆だ。夢がない人こそ受験勉強するといい、と黒川さんは語る。
「大学を変えただけで自分も変わるなんてことはなくて、結局は自分でどう動くか。でも、前の大学に比べたら北大にはアクティブな人がかなり多い。授業で手が上がる数とか、明らかに違う」
「なんか『普通』の枠から外れたすごい人って、きっとええ大学に行くほどおると思う。確かに、夢がある人はその夢を叶えるために精一杯やればいい。でも、将来何するか迷ってる人が夢を見つけようと思ったらすごい人と出会うチャンスがあるといいし、持った夢を叶えるためにはできることも増やしておく必要がある。だから、夢がなければ、受験勉強をちゃんとやるといい。最後は自分から動くことが全てだけど、最初からみんなが一人で動けるわけじゃないもんな」
でも最後は自分の努力や、と黒川さんは最後に念を押した。

就職したい企業のイメージも持てるようになった、とも語った黒川さんは、新たな大学で夢を見つけたようだ。夢がない人こそ、たくさんの人と出会い可能性を広げるために受験勉強をするといい。そう語る黒川さんの目は、見下ろした新幹線ではなく見上げる明日へと向けられていた。

注1:北大サマーインスティテュート(Hokudai Summer Institute)…本学が夏タームに主催する、日本最大級のサマースクール。様々な分野の集中講義が開催され(使用言語は原則的に英語)、学外からも多数の留学生などが参加する。

注2:国際インターンシップ…本学が主催する、短期間のインターンシップ。海外に拠点をおく様々な企業に派遣された学生が、海外での勤務を体験する。