ビールと紡ぐ未来の札幌 サッポロビール150周年

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サッポロビール株式会社(以下サッポロビール)が9月に150周年を迎える。サッポロビールは1876年に開拓使が設立した札幌麦酒醸造所が前身となっている。人を育てる札幌農学校(現北大)と、産業・経済を支える開拓使麦酒製造所という形で連携し合い、共に北海道を発展させてきた。この150周年という節目の年に、サッポロビールは何を行い、どんな未来を描くのか。法学部OB(1996年卒)でもあるサッポロビール北海道本部長の牧野氏に取材した。

サッポロビール園(提供:牧野氏)

200年企業としてのサッポロビール

「ただ150周年を祝うだけではなく、皆さんに必要とされるサッポロビールについて再考する年だと考えています」。初めに記者が150周年という年にどんな感慨を抱いているか質問すると、このような答えが返ってきた。これまでサッポロビールが150年も続いてきたのは、皆さんに必要とされてきたからと牧野氏は語る。これからも人々に必要とされる200年、300年企業になるためには、初心に立ち返り、新しい価値を生み出していかなければならないというのだ。「この価値というのは、何も製品の風味だけではありません」。サッポロビールは製品の価値として、場所や状況などとの関連で生まれる『体験的価値』を大切にしている。その一環として、北海道旅客鉄道(株)(JR北海道)との共同企画で『サッポロ クラシックJR北海道スタートレインデザイン缶』を2025年に数量限定で販売した。電車の長旅のお供に、外の景色を眺めながら飲むビールは格別であろう。北海道という地域に150年間根差してきたサッポロビールはこの地域をよく知り、そして地域から愛されてきた。そのため体験的価値を生み出すのに適しているように記者は感じた。

また、製品の価値だけが企業の価値ではない。サッポロビールは高齢化や人口減少など他地域より進行している北海道の問題解決にも取り組んでいるそうだ。牧野氏はその一例として、地域の農家から麦を購入することによる地域産業の活性化を挙げた。雇用創出や経済の発展、それらによる人口の増加などにサッポロビールは大きく関わっている。他にも北大構内で行った適切な飲酒の方法に関する指導や、学生からアイデアを募って行うビジネスなど、サッポロビールは様々な側面から価値を生み出している。

愛されるサッポロビール

次に、サッポロビールの自慢の製品について尋ねた。すると牧野氏は全ての製品が素晴らしい出来であると前置きしたうえで、特に優れた製品として3つのビールを挙げた。「サッポロラガービール」、「サッポロ クラシック」、「サッポロビール黒ラベル」である。その中でもラガービールは特別らしく、牧野氏は目の前の机に象徴のようにラガービールを置いた。「現存する中では日本最古のビールブランドです」。ラガービールに対する牧野氏の誇りが表情から見て取れた。

サッポロ生ビールとサッポロ クラシックを持つ牧野氏

北海道でのみ販売され、北海道を象徴するビールの一つとして道民の晩餐やスポーツ観戦のお供に飲まれるクラシック。高い人気を誇り、牧野氏の最大のお気に入りだという黒ラベル。それらに加えて酒類のみならず清涼飲料水や食品まで、幅広い製品をサッポログループは世に送り出している。お酒を飲まなくても、「ポッカレモン」や「がぶ飲みクリームソーダ」、「北海道コーン茶」などの製品を手にしたことがある人も多いのではないだろうか。

最後に、サッポロビールについてどのような想いを抱いているのか記者が尋ねると、牧野氏は誇らしげに言った。「私はサッポロビールのことが大好きです」。それは牧野氏の語りからもよく分かった。しかし間髪入れず、牧野氏はさらに語った。「私だけではなく、サッポロビールの社員は皆サッポロビールのことを愛しています。だからいいものを作ることができる。例えば採用でも、サッポロビールを愛しているのが最も重要な項目になります」。サッポロビールや札幌という街を作り上げるのは、結局は人だと牧野氏は語る。これからの未来を作っていくのは現在の学生であり、そのためサッポロビールは学生のビジネスコンテストを開いたり、北大で講演を行ったりした。北大とサッポロビール、そして北海道。それらの関係がここに垣間見えた気がした。

サッポロビールが200周年を迎えるまであと50年。300周年を迎えるまでは150年。どちらも人の一生と比してもなお長く、それだけの期間必要とされる企業であり続けることは難しい。しかしサッポロビールは遠い未来においても、北海道にとってなくてはならないものであり続けるのではないだろうか。

(取材・執筆・撮影:大野)