受験特集「どんな道でも、道は道」特設ページ

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この特集は、在学中の北大生が北大生になるまでの道のりを描いたものです。このページは特集全体と各回の内容を大まかに理解するためのページですが、特集にかける記者の思いも最後に書いたのでご一読いただけると嬉しいです。

特集記事一覧(年齢・学年等は取材当時のものです)

第1回 進学か就職か、出した答えは「北大へ」

「どんな道でも、道は道」第1回の主人公は、北大新聞の代表を2022年9月まで務めた理学部3年の野中直樹さん(23)=神奈川・県立厚木東高校卒業=だ。高校卒業後に就職した会社を辞めた後北大に来た、と語る「野中先輩」の過去は実は記者もよく知らなかったのだが、その体験は本特集の記念すべき初回を飾るにふさわしい。ゼロからはじめた逆転劇に、記者が迫った。(取材:田村)

第1回(1)はこちらから

野中直樹さん(撮影:佐藤)

第2回 高2で中退も進学あきらめず、高卒認定試験を経て北大へ

第2回の主人公は教育学部2年の金井舜平さん(20)だ。多くの受験生が勉強に本腰を入れ始める高校2年生の冬、金井さんは通っていた高校を中退した。「高校を辞めて色々なものを失った。取り返せるのは大学進学だけ」。決意を胸に、高卒認定試験を受験し北大に合格した金井さん。その経歴に記者が迫った。(取材:佐藤)

第2回(1)はこちらから

金井舜平さん(撮影:佐藤)

第3回 勉強だけがすべてじゃないけど、受験勉強するといい

今回の主人公は、文学部2年の黒川滉太さん(22)=徳島・県立城ノ内高校(現・県立城ノ内中等教育学校)卒業=だ。英語の授業で記者と初めて会った時に「一度入った大学を自主退学して北大に入学した」とあっけらかんと話してくれたその姿を見て、特大スクープよりも友達の記事が書きたいと初めて思ったことを覚えている。合格して喜んだ後の話が聞きたい、と取材を申し込むと二つ返事で引き受けてくれた黒川さんの道のりに、記者が迫った。(取材:田村)

第3回(1)はこちらから

黒川滉太さん(本人提供)

第4回 将来の夢は、日本で見つけた

今回の主人公は、台湾出身の水産学部4年生、梁冠宇(りょう・かんう)さん(22)=台湾・新北市立板橋高級中學卒業=だ。留学生、と聞くと交換留学制度による留学生や海外出身の大学院生を想起しがちだが、学士課程において日本人学生と全く同じカリキュラムを4年間履修する海外出身の学生についてはよく知らない読者も多いのではないだろうか。「190cmのムキムキマッチョだって書いてね」とジョークを飛ばす陽気な梁さんの経歴に、記者が迫った。(取材:田村)

梁冠宇さん(本人提供)

第4回(1)はこちらから

第5回 おもろい成川は、どこにいてもおもろい成川や

キャンパスには、北大生に「なってしまった人」も意外に多い。今回の主人公、文学部2年の成川航斗さん(21)=京都・私立洛南高校卒業=は定まっていたはずの進路を外れた北大生だ。先輩や同級生と同じように合格できるだろう、そんな未来があっけなく打ち砕かれた。下に見てきた、そんな大学に来てしまった。成川さんは、どうやって前に進もうとしたのか。やりきれない気持ちのまま講義棟に通う過去の受験生が「北大生になっていく」、その過程を追った。(取材:高野)

成川航斗さん(本人提供)

第5回(1)はこちら

この特集にかける思い

この特集で伝えたいことは、主に5つです。

①元気・やる気を与えたい!(受験生の皆さんへ)
 冗談がきつい、という反応が返ってきそうですが、いたって真面目な話です。受験勉強も大詰めを迎えたこの時期には受験生を急き立てるように「がんばれ」ばかりが叫ばれがちですが、それだけでは皆さんへのメッセージとして不十分だと思っています。
 受かるか微妙な第一志望を貫いてここまで来たけど、落ちたらどうしよう。例えばそんな、どこからともなく湧いてくる不安に真に打ち勝つ力になるのは、かつて同じように自分自身の弱さや迷いに向き合った誰かの記憶です。完全無欠の天才でなくても、教科書が全く頭に入ってこない日や眠れない夜があっても、大学にはちゃんと合格できる。その事実こそが、何よりも強い力を与えると信じています。
 だから、僕は言いたい。どうしていいか分からない日があったら、眠れない夜があったら、この特集を読んでみてください。「がんばれ」とは書いてないかもしれませんが、読んだ後には元気が出る構成にしてあります。あとちょっと、自分を信じて最後まで走り抜けてください!

②等身大の北大生
 一部の地域・高校では北大生のことが伝説のように語られていると耳にしますが、そういった北大生との関わりが少ない方々にも脚色がない北大生の受験の体験談を届けたいです。いわゆる「合格体験記」作成のために受けた1時間の取材がわずか4分の動画になった、というのはある取材対象者の話ですが、そういった無理な切り貼りのない構成も心がけました。結果として字数の多い記事が増えましたが、丁寧に読んでいただけると嬉しいです。
 また、取材の対象者には特殊な経歴の北大生もいますが、そういった北大生を好奇の目のみで見ることはしていません。「何をしたか」だけでなく「何を考えたか」「何を感じたか」をより具体的に聞くことで、読者の皆さんにも共感してもらえる記事を目指しました。

③大学受験とはどういうものか
 この特集だけで受験の現状が正しく理解できる、と書けないのがつらいところですが、皆さんが受験に対して抱くステレオタイプが少しでも崩せたらいいと思っています。詳しくは後段へ。

④「珍しさ」に頼らなくても、面白い記事が書けること
 こうやって記事を書いていると、つい「大きなこと」や「ヘンなこと」ばかり取り上げたくなるものです。しかし、北大に根ざしたメディアとしての私たちの使命はむしろ「小さなこと」を大切にすることだと僕は考えています。
 重大なニュースを報じるならプロの記者にはかなわないし、いわゆる「ビックリ映像」は誰もがSNSで発信できる時代です。そんな時代の中で私たち学生新聞が果たすべき役割とは、見慣れたキャンパスの見慣れた毎日を学生ならではの視点から切り取り、見えていそうで見えてはいない機微を捉える問いを立て具体的に話を聞いた上でより多くの人へと伝わる言葉で発信することではないでしょうか。そのため、今回の特集ではパッと目を引く情報をまとめることにとどまるのではなく、丁寧な分析やメッセージをもたせることを大事にしながら記事を書くよう心がけました。

⑤他者のどんな進路も尊重する姿勢
 記事を読めばわかる通り、本学へと入学してきたその経緯は学生によって大きく異なります。その中には、受験当初は本学へ入るつもりはなかった学生などもいるのが事実です。
 しかし、そうして入学した北大生たちが本学のキャンパスで活躍していることもまた事実です。思い描いたようにはならなくとも、受験期に努力して歩き切った本学への道はどこかで価値あるものになる。そういう意味での本学の「懐の広さ」を、伝えたいです。
 そして、私たちはそうした寛容さを伝えることで進路の多様性を認める社会に貢献したいと考えています。第一志望を最後まで貫いた人も、安全圏の大学で手を打った人も、もっと言うなら大学に行かないと決めた人も、じっくり考え出した結論が大事にされる社会を作りたい。浪人がしにくいと言われるようになる一方で推薦入学に対する偏見も残る、そんな現代社会が少し変わればいい、どんな道でも立派な進路だと認めてもらえる社会を作りたい。特集名「どんな道でも、道は道」には、そんな思いを込めました。

どうして、この特集を組んだのか

塾・予備校などからは「合格体験記」と呼ばれるものも多く出されていますが、そういった広告に出てくる北大生のイメージと私たちの実像との間にギャップを感じたことが企画立案のきっかけになりました。
 もちろん、広告は広告ですから批判するつもりはありません。しかし、読み手側の高校生が受験の経験談に触れる機会がほぼその「広告」に限られてしまっている現状は、変えていくべきものです。いわゆる「親世代」の世間話を聞いていても、受験については誤った認識に基づくいたずらな卑下の言葉が目立ちます。受験勉強をする生徒が「かわいそうだ」と言われることへの違和感は社会でもようやく認識され始めたようですが、こういった偏見もやはり情報不足から生じていると言わざるをえません。
 受験についての「報道」が、欠けている。私たち北大生が数年前に見た景色が、ほとんど誰にも伝わっていない。そんな今を学生新聞の力でどうにか変えていこう、と思い立って企画を立ち上げました。センシティブな内容を扱うだけに取材は非常に困難でしたが、それでも取材の意義を理解し協力してくださった皆様にこの場を借りて御礼を申し上げ、結びとさせていただきます。

(文責:田村)