「やるしかない」と決意 本学初・南極地域観測隊長 青木茂准教授 【教員紹介 第3回】

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今年11月8日、本学低温科学研究所(以下、低温研)の青木茂准教授が第61次南極地域観測隊長(兼夏隊長)に任命された。本学から南極地域観測隊長が誕生するのは初。

そこで今回の教員紹介では、本学初の観測隊長となった青木准教授に話を聞いた。

話を聞いた青木茂准教授(低温研内居室にて)

 

専攻は海洋物理

准教授が本学にやってきたのは2003年のこと。元々は東京の国立極地研究所(以下、極地研)で海洋の研究を行っていたが、本学が同じように極地における海洋の研究を行っていた関係で低温研へやってきた。

准教授の専攻は海洋物理学。主に南極周辺の海を対象としており、極地研時代からその変化を観測してきたという。

 

氷河の観測から隊長に

今回の第61次南極地域観測では東南極に位置する「トッテン氷河」の観測がメインテーマの1つ。これまでの観測から、トッテン氷河の厚みが減少傾向にあることが分かっており、氷床の海への流出が加速していることが疑われている。今回の観測でトッテン氷河周辺の海の構造を調べることで、氷床の流出に伴う海水位の変化の基礎知識を得ることができる。

准教授が観測隊長に選出されたのはこのテーマが関係している。准教授率いる研究プロジェクト「ROBOTICA」はトッテン氷河観測の中心を担っている。「南極地域観測第Ⅸ期6か年計画」のテーマの1つとして東南極における海洋・氷床変動の調査が選ばれ、2016年から始動。このプロジェクトを引率しているということから、来る第61次の観測隊長として青木准教授が選ばれることとなった。トッテン氷河周辺の観測計画は日本では初。世界でも例がほとんどないという。

 

厳しくも実り多い越冬経験

准教授が南極地域観測に赴くのは今回が初めてではない。第39次観測隊には越冬隊員として、第43・56次観測隊には夏隊同行者として参加経験がある。特に、越冬隊員としてはおよそ16ヶ月南極に滞在していたという。

当時の経験について次のように語る。「観測は大自然の中でやるものだから、上手くいかないこともある。準備をしていてもそれを上回る現象に遭遇する。基地から離れた海氷の上で観測をしていたところ、ブリザードに遭い、気が付いたら周辺が全く見えなくなった。慌てたけれど、慌ててもしょうがない。そのときは雪上車のわだちを辿ることで何とか帰り着いた。自然の大きさを感じた」。一方で、楽しめたこともあるという。「一緒に越冬した仲間が良い人ばかりだった。色んなバックグラウンドを持った人が一緒に生活する。自分には無い能力を持っていると知ることができ、視野が広がったと思う。(こういう人たちと越冬できて)幸いだった」。

青木准教授(1998年・南極昭和基地の近辺にて)。海洋の観測に向かう途中。そりと。

 

隊長としての抱負は

改めて、観測隊長としての思いを聞いた。「重い仕事。隊長は他の人の色々な観測テーマ・基地の運営にも携わる。自分の観測だけを見ていればよいとはならない」とした上で、「こういった業務は今後観測を続けるために必要なこと。『やるしかない』と腹をくくった」と語る。

出発は来年の11月。今後はそれに向けて人員募集・物資の準備や訓練などを行う予定。

 

海洋に人間の影を見る

最後に准教授の専攻である海洋物理学について聞いた。准教授が海洋物理学を始めたきっかけは「海の仕組みを知りたい」という単純なことだったが、最近になって「海は色んなところで相互作用している」と強く感じるようになったという。「南極の海は南極周辺で閉じているわけではない。北太平洋まで影響を与えていたり、赤道付近から南極が影響を受けていたり。それが面白くもあり、逆に怖くもある。」「南極周辺の変化は人為的な要因もあるとも言われている。人間の仕業を見てしまうことの怖さや脅威を感じる」。

それでもなお、「人間の影響を感じるということは人間の社会を考えるうえで大切だ、という捉え方もできる。純粋な興味だけでなく、社会運営を考える上でも意味のある仕事だと感じる」と結んだ。