サンゴの化石の分析でアッカド帝国崩壊の原因が判明――本学理学研究院、渡辺剛講師ら

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本学大学院理学研究院の渡辺剛講師らの研究グループは、アッカド帝国(メソポタミア文明)を崩壊へ導いた気候変動の詳細を、サンゴの化石の分析により解き明かした。研究により、雨季の乾燥・寒冷化があったことが判明。研究グループは、それらの影響からアッカド帝国が滅亡したとの考えを示した。この研究成果は学術誌の「Geology」に10月2日、掲載された。

渡辺講師らは、アラビア半島オマーン周辺の気候変動を調査するため、同国北西部の沿岸でサンゴの化石を収集していた。考古学者との情報交換の中、気候変動と約4100年前の同帝国崩壊の関係性に着目するようになったという。その後、発見した化石のうち1つが放射性炭素年代測定により4500~2900年前に生息していたと判明。化石を化学分析して当時の海水温と塩分変動を復元し、同様に現生のサンゴも分析して過去26年間分を復元した。サンゴは骨格に過去の海洋・気候変動が短期間ごとに記録されているという特長をもつため、化石と現生サンゴの両方から各季節の気候を復元できた。

4500~2900年前の気候を復元した結果、約4100年前のオマーン北西部は、ほかの時期に比べ雨季である冬が極めて乾燥し寒冷だったと判明。現生のサンゴの解析からは、アラビア半島にシャマールという地域風が頻繁に吹いた年ほど、オマーン北西部は冬に寒冷な気候であったことが解明された。シャマールは砂嵐を起こし西アジア地域の乾燥を深刻にする風で、現在においても健康や農業への影響が指摘されている。よって研究では、アッカド帝国が崩壊した約4100年前にはシャマールが冬に頻発していて、それによる乾燥・寒冷化や砂嵐の影響で同帝国は崩壊した、と結論付けた。具体的な影響としては、農業が営まれていた冬に砂嵐が灌漑(かんがい)設備の機能停止や健康被害、乾燥が農業の困難化を起こすなどし、移民や死亡率上昇を招いたとしている。

研究の意義について、渡辺講師は「気候変動と人間の営みの関係はある程度普遍的なので、過去を学ぶことで、それらの関係を考えることができる」と語った。今後の研究では、サンゴの化石をさらに多く集めて情報を増やすという。アッカド帝国崩壊後に周辺へ人々が移住した可能性などを探るため、「メソポタミア文明の周辺にも研究対象地域を広げたい」とも話した。

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