「総長の広く大きな世界観が大学の価値」本学第15代総長 丹保憲仁氏に聞く

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丹保憲仁氏

本学第15代総長(1995~2001年度)の丹保憲仁氏が北海道大学新聞の取材に応じた。この20年を振り返り本学の現状を評価してもらい、総長の役割などについて聞いた。本学が東京五輪のマラソンコースになったことについては、チャンスだと前向きな受け止めを示した。一問一答は以下の通り。

――今の北大は総長だった20年前から変わりましたか。

「学部の構成など北大は私の時代と大きく変わり、今は安定期に入ったとみている。ただ細かいことをたくさんしすぎている印象を受ける。ある目的に対して小さな組織を沢山作り、それらがうまくシステム化されていない。学問は大きな枠組みで丸めてするのがオーソドックスだ」

「米国では大学の学部や学科の枠組みは近代以降大きく変わっていないが、中身が全然違う。それを自由に変えられることが日本と米国の大学の違いだ。北大はそれがなかなかできなかった。日本では学科という形を作っても中身を大きく変えない。高等学校までは良いが、大学教育は学校が違えば、全く違った教育があって良い」

「新渡戸カレッジをみると、学部教育とそれを分ける理由がわからない。学部教育をしっかりすれば、新渡戸カレッジのしているようなことは全部できる。北海道大学〇〇学部ががっちり仕事したほうがずっと良いだろう。お互いに連携したいなら、例えば工学部と経済学部の講義を共に学べるようにすれば良い。特殊な組織を作る必要はない」

――大学の学長(総長)に求められるものは何と考えますか。

「世界観と歴史観をしっかり持っていて、自分自身も学問の一定以上の能力を持っていることだ。学長とその周辺がどのぐらい広くて大きな世界観を持っているかが大学の価値だと思う。学長の仕事は世界観を提示し、いかにみんなに理解してもらうかだ。一人では何もできない。自分のことをよく理解してくれる、もしくは反対の意見を持っている副学長などが必要。常に議論や説得をしながら支えてもらうしかない」

――北大がいまの規模を保ち生き残っていくためには何が必要ですか。

「やはりそれぞれの教授がその分野で日本一になることだろう。学生がそれにがっちりくっついていく。それができれば必要な資金は自然に入ってくる」

――東京五輪のマラソンで北大がコースになりました。

「構内を世界中に放送してくれる、北大を見せる良いチャンスだと思う。日本の大学でこれだけきれいなキャンパスを持つ大学はない」

――いまの学生に期待することはありますか。

「よそ見をしないできちんと勉強してほしい。知っていることを覚えるのは入学試験までで、高校や予備校とは全く違う勉強になる。覚えるだけでは不十分で、それをどう使うかを考えてほしい」

――北大の教員の方には。

「人のまねをせず、自分でこれが大事なテーマと思ったことをやり抜くことだ。研究テーマを間違えないよう、専門外のものも含め本はたくさん読むべき」

たんぼ・のりひと 1965年工学博士(北海道大学)。69年本学工学部教授、93年工学部長など経て95年度から6年間本学第15代総長。北大では大学院重点化や北キャンパス機構の創成のほか、総合博物館、環状通エルムトンネル、新渡戸像、平成ポプラ並木などの新設を主導。その後、放送大学学長や道立総合研究機構理事長などを歴任し、現在は北海道河川財団会長。札幌市出身、87歳。

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