研究員務める周庭氏の逮捕に北大教員らが抗議声明 1万件超の署名集まる

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声明のウェブサイトに掲載された豪州の芸術家によるイラスト(©︎Badiucao)

香港民主派の中心メンバーだった周庭(アグネス・チョウ)氏が8月10日に現地警察に逮捕されたことを受け、同氏がフェロー(研究員)に就任している本学公共政策大学院の教授らがインターネット上で抗議声明を発信した。逮捕は不当だとして署名を呼びかけ、声明の発信から1カ月で署名者は1万人を超えた。

声明を出したのは本学公共政策大学院の遠藤乾教授や池(ち)直美専任講師など学内外の研究者ら。中国で6月末に制定された香港国家安全維持法により周氏らが逮捕されたことを受け、学外の研究者らとも協議の上で「何かしなければ」と発信を決めたという。

特設サイトなどに掲載された声明では、同氏らの逮捕について「不当な逮捕に抗議」した上で「(同氏らが)拷問を受けてはならない」と求めている。一方で「これらの要望は、特定の地域の混乱や分裂を求めているものではない」とし、同法の趣旨には反しないとも強調している。賛同者への署名呼びかけも同時に行い、声明の発信からおよそ1カ月間で1万人を超える賛同が寄せられた。

本学公共政策大学院と周氏との関係は数年前から始まった。香港の民主化運動「雨傘運動」の学生らを本学に呼ぶなど東アジア情勢に関心のあった池講師らは、他大学の研究者からの紹介で同氏と知り合い、SNSなどを通じて交流を重ねてきたという。

周氏は本学や北海道への訪問歴はないものの、「香港で起きていることを学生や一般に発信できる人物」だとして昨年7月にフェローに就任。フェローは任期中に同大学院の重要課題について研究し、協力して発信するという位置づけだ。今年1月に同大学院の研究会に招く予定だったが同氏が出国不能で実現せず、昨年末には同氏のフェロー就任に中国当局が抗議していた。なお、今年度いっぱいのフェローの任期については「全うしていただく」(池講師)としている。

周氏は現在仮釈放中だが今月中にも起訴される可能性がある。池講師は「そもそも起訴自体がおかしいが、その可能性があることを知ってほしい。許してはいけない」と国際世論に訴えることに注力し、同氏を取り巻く状況が改善することに期待をかける。日中両国や香港政府に対しても働きかけを行っている。今後は集まった署名の提出など、次のアクションを検討していくという。

また近年、本学や北海道教育大の教員らが中国当局によって拘束される事案も相次いでいる。池講師は「学問の自由が保障されておらず、(研究者らは)怖くて中国に行けない状態」だと指摘。交流が完全に止まることはなくとも、周囲の研究者らの間では「(中国には)当分行かない」とする声が多く聞かれるという。同講師らは日中間の学術交流が十分にできないことに加え、日中関係、ひいては世界中の研究者にも影響が及ぶことを懸念している。

声明のウェブサイトは、https://stand-with-hong-kong.jimdosite.com/

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