【受験特集:どんな道でも、道は道】第1回(2) 進学か就職か、出した答えは「北大へ」 野中直樹さん(理学部3年)

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「大学には、いろんな人がいる」そんな言葉は、誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。だが、私たちはまだ「いろんな北大生」が北大生になった時の話を知らない。聞けそうで聞けない、在りし日のそんな話を取り上げるのが今回の特集「どんな道でも、道は道」だ。はたから見れば小さな、でもそばにいれば大きな選択にじっと耳を傾ければ、等身大の北大生が見えてくる。

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どんな道でも、道は道」第1回の主人公は、北大新聞の代表を2022年9月まで務めた理学部3年の野中直樹さん(23)=神奈川・県立厚木東高校卒業=だ。高校卒業後に就職した会社を辞めた後北大に来た、と語る「野中先輩」の過去は実は記者もよく知らなかったのだが、その体験は本特集の記念すべき初回を飾るにふさわしい。ゼロからはじめた逆転劇に、記者が迫った。(取材:田村)

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現在の野中直樹さん(撮影:佐藤)

40年も、クリーニングを続ける実感がわかない

「ニートになった」と苦笑いする野中さんは、高校を卒業してから初めて現状に危機感を抱くようになった。
「平日の昼に散歩してると『こんな時間にどうしてここに』とみんなからじっと見られる。周囲の目が気になって、どこでもいいから雇ってくれるところを探した」

幸運にも、野中さんは高校卒業直後の4月に地元のクリーニング店に採用される。「一応バイトじゃなくて正社員になる予定だったけど、人手不足の業界だから通ったのでは」と、野中さんは当時を振り返った。

しかし、野中さんはクリーニング店をわずか4ヶ月で退職する。試用期間中のことだった。

どうして、そんなにすぐに仕事をやめたのか。一番の理由は、クリーニングの仕事が好きになれなかったことだ。
「19だった自分はあのまま仕事を続ければ40年以上もひたすら誰かの服を洗い続けることになってたけど、人生がそれだけで終わっちゃうことに何とも言えん物足りなさを感じたんだよね」

小さな不満も積み重なり、えも言われぬ欲求不満に追い打ちをかけた。採用時には店舗での接客もさせてもらえると言われたのに、ふたをあければ「男は裏方」の一言で重労働ばかりさせられる。仕事前に毎日やる15分の清掃にも時給は出るはずなのに、払ってもらえない。そして、職場に同年代がいない。何を言っても「これだから若いやつは」の一点張り、自分の話は一切聞いてもらえなかった。「実家暮らしだから住むとこや食べるものに困ることもない、と思って勢いでやめちゃった」と、野中さんは語る。

漠然とした負い目から「魅力を感じなかった」仕事へ就いても、長くは続かなかった。大学への進学とてんびんにかけ続けた「就職」の道に限界を感じた、そんな野中さんがいよいよ本学を受験する決意を固める話は、次章に譲りたい。

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