【受験特集:どんな道でも、道は道】第2回(5) 高2で中退も進学あきらめず、高卒認定試験を経て北大へ 金井舜平さん(教育学部2年)

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「大学には、いろんな人がいる」そんな言葉は、誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。だが、私たちはまだ「いろんな北大生」が北大生になった時の話を知らない。聞けそうで聞けない、在りし日のそんな話を取り上げるのが今回の特集「どんな道でも、道は道」だ。はたから見れば小さな、でもそばにいれば大きな選択にじっと耳を傾ければ、等身大の北大生が見えてくる。

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第2回の主人公は教育学部2年の金井舜平さん(20)だ。多くの受験生が勉強に本腰を入れ始める高校2年生の冬、金井さんは通っていた高校を中退した。「高校を辞めて色々なものを失った。取り返せるのは大学進学だけ」。決意を胸に、高卒認定試験を受験し北大に合格した金井さん。その経歴に記者が迫った。(取材:佐藤)

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教育学部に移行した現在「できることを自分のペースで」

現在の金井さん(撮影:佐藤)

臨床心理学を学びたいという気持ちは入学後も変わらず、2年次には予定通り教育学部へ移行した。

「北大は授業も研究も面白い。規模が大きく、やれることがたくさんある。今はやりたい勉強をすることができて満足している」

「高校中退で失ったものはたくさんあるけど、得られたものもある。今は、高校を辞めたという選択自体は後悔していない」

「お金が欲しい」と始めた塾講師のアルバイトでは、高校中退の経験が生きた。「独学で勉強した分、先生から教えられるよりもだいぶかみ砕いて理解できている。中学生でも高校生でも、上手く教えられる」。ときには「学校に行っていない」「学校に行きたくない」という生徒と接することも。そんなときには「大丈夫、先生もそうだった」と声をかける。今では苦手だった高校数学を教えることもあるという。

実は金井さんの兄も北大生。高校時代、兄を訪ねて北海道へ遊びに行っていたことも北大を志望したきっかけのひとつだった。「コロナ禍であまりオープンキャンパスをやっていなくて、唯一見られたのが北大だった。一度見ると『北海道っていいな』と思っちゃった。夏しか行ったことなかったから冬の厳しさを知らなかったけど」。兄弟仲良く、成人してからはときどき2人で飲みに行ったりもする。

最後に、受験生へ向けて。「受験期は模試の順位とか、周りとの差がすごく気になる時期だと思う。人と自分を比較して劣等感を感じる人も多い。俺は、みんながあたりまえにできるはずの、高校へ行って卒業するということができなかった。劣等感の塊だった。でもそんな自分も、できることを自分のペースで続けていった結果こうした今がある。できないことはできない。でも、できることはできる。自分にできることをコツコツやっていけば、その先に幸せがあるんじゃないかな」

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