多様な問題意識が新たな議論に 国際法・国際関係研究会

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多種多様なサークル・部活が存在する北大の中で国際法・国際関係研究会(以下、国際研)をご存じだろうか。国際研は法学部の団体である一方で、多様な学部の人が所属している。今回はその活動について国際法・国際関係研究会の代表、辻川哲平さん(法学部2年)にお話を伺った。

国際研(@hokudaiILC)のロゴマーク 

【国際研の主な活動】

主な活動として、週に1回、10人程度の参加者が国際法に関する文章の輪読や会員による発表を行う。扱う題材は様々で、最近は日本国際問題研究所の論稿や外務省が発行する月刊誌「外交」の記事の輪読を行うことが多いそうだ。会員による発表ではそれぞれが関心を持った国際関係、国際法に関する話題について調べた事を発表する。

そもそも国際法とは国内の制限や規則を定めた国内法とは異なり、国家同士が結ぶ約束である。条文等により明文化されている国際条約と明文化されていない慣習法に分類される。国際法は間接的に他国に影響を与えうるが、国際法を破ったとしても直接的にその行為を罰する事はできない。

国際法や国際関係と聞いてかなり堅苦しくアカデミックな印象を受けるが、代表の辻川さんによると、「法理論について扱うのは確かに難しいが、国際関係の話はニュース性が高いこともありみんながそれぞれの視点から議論に入れる」と話す。

元々は国際法を専門とする法学生の自主ゼミのような性格を持っていたこの研究会も、最近は国際情勢に関する内容を話す機会が多いそうだ。この点について辻川さんは、「僕の入学した2022年は2月にロシアのウクライナ侵攻があり、もともと国際法に興味はあったが、より一層関心が高まった。直接聞いたわけではないがウクライナ侵攻から触発された人も多いのでは」と話す。権威主義的な国による圧倒的な武力侵攻を前に国際法は無力なのか。国際法の意義やその成立過程について互いに軍事力、経済力のパワーバランス、関係国の国民感情や良心など様々な要素を加味しながら議論している。

【会員の多様性と問題意識】

今年、国際研の法学部の学生の割合は約半分と法学部以外の人が約半分を占めた。他学部としては文学部、文学院、総合理系、理学部、獣医学部、水産学部がある。学部の多様性が活動に与える影響について質問すると、「近年は理系の人も多く、普段関わることが少ないので嬉しい。いろんな人が来てくれることは研究会にとっても喜ばしいことだ」と話す。

一方で、学部が多様だから議論の視点やテーマも多様になったという単純な話だけではないらしい。「所属する学部によって(その人の)興味領域も異なると思いますが、学部の違いというよりもむしろ(他学部の)優秀な人がその人自身の問題意識を反映させていることが活動の面白さに繋がっている」と話す。「例えば、カント哲学に造詣の深い獣医学部の人であったり、また海洋法について発表で取り上げてくれた水産学部の人など、それぞれの問題意識が重要だと思います」海洋法についていえば、法学部の国際法の授業において、法律として海洋法を扱う事はあっても、海洋をメインに扱った上で法律を解釈する機会は少なく、海洋や海洋資源に着目して行った海洋法の目的や意義に関する発表は斬新だったとのことだ。

交流会で国際政治について議論を深める会員たち(国際研提供)

【模擬国連の開催】

国際研は今年、模擬国連を初開催する。模擬国連とは参加者が国連加盟国の代表、いわば大使として、特定の議題についての交渉を行い、自国の国益や目標を達成できるかを競い、国連の動きを模倣する活動である。議題は「ウクライナ侵攻に対するロシアへの経済制裁」で、10月中の開催を予定している。今回の議題について、「いわゆるグローバルサウスの国が自国の国益を守りながら、西側とロシア側と交渉を繰り広げていくのが注目すべき点」と話し、近年実際の国連の交渉の場でもグローバルサウスが議論を進める上で重要な存在となっており、「(通常の輪読などの活動では得られない)外交交渉の苦労を体験する場にしたい」と語っていた。

【最後に】

国際法の役割について議論した活動(国際研提供)

国際法・国際関係研究会はその名称から受ける堅苦しい印象とはまた別に、国際法の役割や国際関係への幅広い理解を各々の問題意識によって生んでいる。様々な価値観をもつ会員が生み出していく議論は、混迷続く国際社会で生き抜く際に大いに助けとなるだろう。

(取材・執筆:高野)