「楽しく気候変動を考える場を」北海道大学気候変動研究会が始動

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「北海道大学には、学生が主体となって気候変動について取り組む機会が少ないのではないか」──。

そんな問題意識から今年5月、新たな学生団体「北海道大学気候変動研究会」(以下、研究会)が発足した。設立に対する思いや今後の展望について、共同代表を務める井艸(いぐさ)駿太さん(理学院修士1年)と大島隆史(たかふみ)さん(公共政策大学院修士1年)の2人に話を聞いた。

共同代表を務める大島さん(左)と井艸さん(右)

COPへの参加が設立の原点

研究会設立の大きなきっかけは、井艸さんが環境NGOでの活動を通じて参加した、国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)だった。世界各国・地域の代表やNGOの関係者らが集まり、気候変動対策について議論する国際会議だ。 

井艸さんはCOP30で様々な国の学生と交流する中で、他大学には気候変動について考える学生組織があることを知ったという。「海外から来ている学生に刺激を受けた」と話す。

一方で、北大はSDGsや環境分野の取り組みに力を入れているものの、学生主体で活動する組織は多くないと感じたという。

「北大にはせっかくいい場所と人がいるのにもったいない」。その思いが、研究会設立へとつながった。

専門を超えて考える気候変動

大島さんは、法学部時代に国際法のゼミで気候変動問題を取り扱った経験から、この問題に関心を持った。「気候変動は法学的にも取り扱いづらい事象であると感じ、興味を持ち始めた」と大島さん。

以前から交流のあった井艸さんと気候変動について語り合う中で「北大にもこうした場が必要だ」と認識を共有するようになった。

大島さんは、気候変動はひとつの学問分野だけでは捉えきれない課題だと強調する。例えば、脱炭素技術には理工系の知見が必要だが、それを社会に普及する制度設計には法学や政治学が欠かせない。さらに経済や医療など、多様な分野が関係する。

「それぞれの学問分野で必ず関わる点はある。それぞれの強みを持ち寄って、考えを共有できることが大切なのではないか」。

専門分野を横断して学び合えることこそ、研究会が目指す姿だ。

「最初の一歩」を後押しする場に

井艸さんは、気候変動への関心と実際の行動の間には、大きな隔たりがあると感じている。

実際に、環境NGOで活動する中で、政府やシンクタンクが実施したアンケート結果を参考にする機会があった。アンケートでは「気候変動に関心はある」「何かしなければならないと思っている」と答える人は多い一方で、「何をすればよいのかわからず、行動に移せていない」との回答も目立ったことが印象に残ったという。 

「研究会に入ること自体が、ひとつの行動になると思う」と井艸さん。

研究会では、活動内容もメンバー同士で話し合いながら決めていく予定で、一人ひとりの関心やアイデアを生かせる場にしたいという。 活動を通して、メンバーが自分なりの関わり方を見つけていければと願う。

北海道だからこそ考えられること

北海道という土地も、この活動の大きな強みだと話す。

「北海道は自然環境がとても豊かな地域。その自然が気候変動によって失われることへの危機感を持っている人も多いと思う」と井艸さん。例えば、環境NGOには「地元の自然を守りたい」という思いから参加したメンバーは少なくないという。

また、近年は釧路市でのメガソーラー建設計画に対する反対運動が注目を集めた。井艸さんは、この事例を「地域から声を上げ、環境について考える動きの一例」と捉える。

「自然への愛着があるからこそ、地域から声が上がる。北海道には、そうしたボトムアップの活動が生まれやすい土壌があると思う」。

さらに、北大には農学や水産学など自然環境に関わる研究が数多くあり、そうした強みも活動に活かしていきたい考えだ。

学生だからこそ持てる強み

一方で大島さんは、学生だからこそ持てる強みもあるという。

「社会人になると、会社名など肩書きがつくようになる。すると企業間などでも利害関係により、協力体制が築けないこともある。でも学生の場合はそうした利害関係が少なく、様々な人から話が聞きやすい」。

さらに井艸さんは、COPでは若者が意見を表明する機会が設けられているなど、世界では若者の声を取り込んでいこうとする流れがあると話す。

「気候変動は将来にいくほど被害を受けるものであるため、本来ならば最も被害を受ける若者の声を聞くべき」と井艸さん。

研究会も、そうした発信の土台となる場を目指している。今後は、地域との連携や中高生向けイベントの開催に加え、研究会からCOPへ学生を送り出せるような仕組みづくりも構想しているという。

「楽しく気候変動を考える」

井艸さんが最後に強調したのは「楽しさ」だった。

一見すると、深刻な環境問題にはそぐわない言葉にも思える。それでも、あえてこの言葉を選んだ背景には「気候不安」への問題意識がある。

近年は、気候変動について知るほど将来への不安や無力感が大きくなり、行動に踏み出せなくなる「気候不安」という言葉が知られるようになった。 

井艸さんは、「気候不安が広がる状況に加え、日本では海外で起きている貧困や戦争などの問題に目を向けにくく、無関心になってしまう面もある」と指摘する。

「だからこそ、『楽しさ』という視点は、気候変動に取り組み始めるきっかけとして、日本にこそ必要なんじゃないかと思っています」。

専門や学年を超えて集まった小さな研究会。 その挑戦が北大から、新たな気候変動への取り組みを生み出そうとしている。



北海道大学気候変動研究会では、メンバーを募集している。
興味のある方は、公式LINEやSNS(Instagram、X)、メールから問い合わせ・参加申し込みができる。
公式LINE:https://line.me/ti/g/cDA9wJs_dA 
Instagram:https://www.instagram.com/climate_hokkaido/
X:https://x.com/climate_HU
メール:climatehokkaidoclub@gmail.com

(取材・執筆・撮影:川俣)