撤去される跨道橋を巡るアートプロジェクトが進行 ―北大CoSTEP

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本学CoSTEP(高等教育推進機構・科学技術コミュニケーション教育研究部門)は、撤去作業が進んでいる札幌試験地と農学部地区を結ぶ跨道橋に関連した3つの企画を進めている。本企画は、昨年9月に開始した札幌試験地内の使われなくなった温室を活用する企画「アノオンシツ」の一環として実施中だ。

今回の企画は▼市民から跨道橋に関する思い出を集める「さよなら、あのハシ」、▼クレーンの設置など撤去作業に支障があるため伐採された木を材料として、地元の家具作家ら10組が椅子をつくり、研究者とのトークや展示を行うイベント「札幌の木、北海道の椅子展2021」、▼伐採された木を使った木彫作品の展示や伐採工程映像の上映――の3つ。

「札幌の木、北海道の椅子展2021」のポスター(本学CoSTEPホームページより)

本企画を担当するのはCoSTEPの朴炫貞(パク・ヒョンジョン)特任講師。アーティストとして活動しながら、本学で研究を行っている。「アノオンシツ」プロジェクトを構想したきっかけについて「温室を尋ねたときに、古い建物が醸し出している趣や時間の積み重ねから魅力を感じたことだ」と話す。同時期に跨道橋の撤去の話があり「時代の節目になる時期と思い、その記憶を残していくことを含めてプロジェクトを進めることになった」という。

「まちが変わっていくことはある意味自然な流れだと思うが、長年多くの人々にとって毎日の風景になった場所は、単なる『建物』以上の意味を持つ」と朴講師。跨道橋の撤去を単に見守るだけではなく、無くすときにも「きちんとさよならをする儀式のようなこと」が必要だと思い、今回のプロジェクトに活用したいと考えた。

市民から跨道橋に関する思い出を集めようと考えたきっかけについては、「大学の建物は、特に北大の場合、まちのど真ん中にあり、札幌市民の日常生活とともに存在してきたと思う。日々使っていた教職員・学生にとっても、あの橋はなんだろうと、疑問に思いながら毎日橋の下を通っていた人にとっても、跨道橋は特別な存在だったのではないか」と感じていたことを語った。

「さよなら、あのハシ」のポスター(本学CoSTEPホームページより)

また、跨道橋の構造の面白さも挙げた。農学部の裏から緩やかなカーブの道を通って森に入り、森を抜けると石山通を走る車を見渡せる跨道橋を渡る。そして、その先の森にカーブしながら入っていくと苗畑に辿り着く。一連の道のりを往復すると、一つの旅を経験しているように感じたという。

各企画の実施時期については、すでに「さよなら、あのハシ」企画で思い出の募集が始まっている。「札幌の木、北海道の椅子展2021」は6月に実施予定だったがコロナ禍で延期。現在動画で家具作家らの紹介などを順次公開しており、2022年に対面での展示を行う予定だ。また、木彫作品の展示や伐採工程映像の上映は12月からを予定しているが、新型コロナの情勢により変更される可能性がある。