北大総長、ロシアのウクライナ侵攻に「許容されない」とメッセージ スラブ・ユーラシア研は緊急セミナーを相次ぎ企画

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ロシアがウクライナへの軍事侵攻を2月24日に開始したことを受け、本学は28日、軍事侵攻に反対する総長メッセージを発表した。また本学のスラブ・ユーラシア研究センターは25日に「緊急アピール」として侵攻への反対を表明するとともに、ロシアへの経済制裁などについて専門家らが議論する緊急セミナーや座談会を相次いで企画している。

4か国語の総長メッセージを発信

本学の宝金清博総長は28日、本学ホームページを通じてメッセージを発表。日本語・英語・ロシア語・ウクライナ語の4か国語で発信した。「侵攻は、紛争の平和的解決という国際的、普遍的合意を無視したものであり、許容されない。軍事介入の即時終結と紛争の平和的解決を強く求める」とした上で、本学が日ロの大学間交流に深く関与してきた経緯を踏まえ「現状を深く憂慮する」と表明。紛争の平和的解決に向けてロシアの学術界で議論が行われることへの期待を示すとともに、本学のロシア・ウクライナ双方の学生や教員の平穏を維持するため「万全の取組を行う」とした。

ロシアや周辺地域に関する研究を行っている本学のスラブ・ユーラシア研究センター(SRC)も25日、ホームページに研究者らによる緊急アピールを掲載。「侵攻を断固として非難し、脅威にさらされているウクライナの市民、および戦争に反対するロシアの市民との連帯を表明する」とした。

スラブ・ユーラシア研究センター、オンラインセミナーを相次いで開催へ

セミナーで講演するロシアNIS経済研究所の服部倫卓所長(ライブ配信画面からキャプチャ)

SRCはロシアへの経済制裁や情勢の文化面での反応などについて一般向けのセミナーや座談会も相次いで企画している。4日には初回の緊急セミナーとして「経済制裁とロシア:緊迫するウクライナ情勢」をオンラインで開催。ロシア経済の専門家らが講演や議論を行い、一般市民など300人以上が視聴した。

4日のセミナーでは前半、ロシアNIS経済研究所の服部倫卓(みちたか)所長がロシアへの経済制裁の内容に関する分析結果を報告した。服部所長は各方面で厳しい措置が行われているとしながらも、「最終兵器」と言われてきたSWIFT(国際銀行間金融通信協会)からの排除によるロシアの銀行に対する経済制裁に関して、効果が過大視されていた可能性を指摘。SWIFTについて「決済情報の伝達システムにすぎず、決済自体は現在も可能」であることや、ロシア最大手の銀行や化石燃料の決済で多く使われる銀行は排除の対象外となっていることなどを説明した。

また加えて、ロシアからウクライナを経由して欧州に天然ガスを供給するパイプラインが侵攻後も稼働していることにも言及。「『ロシアがパイプラインを地政学の武器に使っている』という言説があるが、ロシアは欧州に天然ガスを粛々と供給し続けている」と述べた。

SRCの田畑伸一郎教授も引き続いて講演し、制裁が与える影響に関するロシア経済のマクロな視点からのシミュレーションを独自に行った結果を紹介した。田畑教授は「国債残高の比率も少なく、ロシアの財政は健全」と指摘しつつ、「経済制裁がロシアの石油や天然ガスの輸出に影響する場合、ロシアの経済成長や財政に相当の影響が出る可能性が高い」と結論した。

セミナーの後半では登壇者らが今後の展開などについて議論し、米国や中国との関係性、スポーツへの影響などについても意見が交わされた。

SRCは6日以降も相次いで学内外の研究者らによる緊急セミナーや座談会をオンラインで行う予定だ。詳細は同センターのホームページに掲載されている。